【少年漫画】「進撃の巨人」を語りつくす!シーナ編(前編):無垢の巨人誕生の謎を徹底考察してみたら、エルディア帝国史の真実が見えてきた!
3回に渡る進撃の巨人記事の3回目です。今回は作中で描かれなかった2つの謎「無垢巨人がどうやって生まれたか」「マーレ軍エルディア人部隊の実態(→4回目に分割)」を、ネタバレありで考察(というか妄想)していきたいと思います。
無垢の巨人はじめて物語
個性的な無垢の巨人たちは、どのようにして生まれたのでしょうか。エレンたちの時代では、マーレ製巨人化薬の注射、ジークの脊髄液取り込み&叫び、ピカ虫(光るムカデ)ガスという3つの方法によって無垢の巨人が生まれていましたが、その源流を時系列に沿って探ってみたいと思います。
始祖ユミルの巨人運用
122話「二千年前の君から」で、始祖ユミルがピカ虫と合体して最初の巨人が生まれたシーンが描かれました。この巨人の力は、敵を蹂躙し、領地の交通、都市環境を発展させ、部族エルディアを強大な国へと押し上げました。この時期の巨人運用を整理します。
- 巨人は始祖ユミルベースの1体のみ
- 自身の意志で巨人化、人間化できた
- 本体が大けがしても回復
- 寿命13年ルールはたぶんない
エレンの時代の知性巨人との違いは、寿命ルールくらいだと思います。うなじが弱点ではあったと思いますが、そこを攻撃できる敵軍はいなかったでしょう。巨人解除の瞬間を目撃していたエルディア人が少なからずいたはずなので、うなじあたりに本体が埋まっている、という認識は当時からあったと考えます。
始祖ユミルは、ユミルの民の源流となる3人の娘を産みます。3人は、おそらく物心つく頃には巨人化を周りから促されたと思いますが、いくら自傷してみても巨人化はできなかったでしょう。始祖ユミルの存在価値はさらに高まり、管理(逃走や暗殺の防止)も厳重になったと思われます。
ちなみに、始祖ユミルが何度も巨人化できていた点から「道」はすでに存在していたと考えるのが自然です。しかし、「道」で巨人の力を生産していたのが誰かは不明です。より太古の継承者たちか、もしくは人ならざる者かもしれません。ここは謎です。
始祖ユミルの最期は、フリッツ王の盾となって槍を受けての死亡。最期まで奴隷としか見られていなかったことに絶望し、「道」の世界へと旅立ちました。ピカ虫との接触からこの瞬間までが13年であり、その期間がユミルの呪いとして、以降の知性巨人の寿命ルールになったと言われています。
巨人力継承計画の詳細
こうして、進撃の巨人の中でもトップクラスの残酷シーン、母の死体を娘たちに食わすの巻、と相成りました。作中ではさらっと描かれていますが、ここに至るまでには様々な過程があったと推察されます。
圧倒的すぎる巨人の力は国の繁栄を支える重要なカギであり、始祖ユミルが生きていた頃より、その力の複製や継承について様々な議論や検証がなされてきたはずです。子供を産ませるということも検証の一つだったと思います。他に、
- 巨人の血や肉を食べる
- ユミルの血や肉を食べる
などを検証したはずです。検証に参加した(食べた)のは、3人の娘たち、他の奴隷、エルディア人(この頃はまだユミルの民ではない)などで、食べる部位や量などあらゆるパターンで試したと思いますが、いずれも成功はしませんでした。その際、ユミルの死につながりかねない重要な臓器(心臓や脳や背骨)は、リスクが大きすぎて検証できなかったと思います。
すなわち、「もし何らかの原因で始祖ユミルが死んだら重要な臓器を食す」くらいしかもう継承の手段が残っていなかったということでしょう。決してユミルの死後に、フリッツ王が適当に思い付きで命令したのではないと考えます。
また、継承できる可能性が高いのは3人の娘だ、という目途も事前に付けていたと見るべきでしょう。ちょっと残酷な妄想をすると、イザという時のために人(母)を食べることに抵抗がないように、三姉妹を教育(洗脳)していた可能性があります。作中のシーンで、三姉妹がけっこう嫌がらずに素直に食べているように見えましたからね。どのような教育をしていたかは……(自粛)
さて、ユミルが死んでしまったことでイザという事態になり、
おかあさんといっしょ
~残さず食べようの会~
の開催となりました。
調理もせずに生で食べさせていましたが(塩くらいはかけていたかもしれませんが)、これには2つの理由があります。
- 巨人成分の変質を防ぐ
- 継承に必要な部位を特定する
1について、煮たり焼いたりすると巨人成分が変質してしまい、継承できるものもできなくなるという可能性があったからですね。当然の選択です。
2について、フリッツ王は「ユミルの体を食い尽くせ」と言っていましたが、これは意気込みみたいなもので、実際はひとつの臓器を食すごとに巨人化を試し、継承に必要な部位を検証していったと考えられます。私ならそうします。
肝臓や心臓、脳など可能性が高そうな部位を食しても巨人化できなかった状況に、フリッツ王たちはかなり焦ったことでしょう。半ばあきらめかけていたその時、最後に背骨を砕いて食した三姉妹は、ついに巨人化に成功します。三人ともです。
…と書きましたが、三姉妹が同じ部位をいっしょに食べていったとしたら、背骨を食べた事で継承できたのか、様々な部位を食べた事で継承できたのかがわかりません。おそらく3人は、部位の順番を変えて食べさせられていたと予想します。そうすることで「背骨(=脊髄液)」が継承のカギであることを特定でき、「娘が死ねば背骨を孫に食わせよ 孫が死ねばその背骨は子から子へ」というフリッツ王のセリフにも納得です。
背骨が特定できた時、当然三姉妹以外のいろいろな人間にも食べさせましたが、成功はしませんでした。ユミル直系の子孫(ユミルの民)でなければ巨人化できないという点も、この時点でほぼ特定できたものと考えられます。
三姉妹が継承した巨人の考察
ここからさらに妄想全開でお送りします。テーマとはちょっと逸れますが、三姉妹が継承した巨人の性質を考察してみます。
いずれ9つに分かれる性質の全てを内包していたのが始祖ユミルの巨人だとすると、各姉妹の巨人は3/9づつの性質を引き継いだと考えます。内訳を以下の表に整理しましたが、始祖ユミルのアイデンティティーを3つに分割してみると、けっこうすんなり分類できました。
長女マリア巨人 |
巨人としてのユミル | 始祖…始まりの巨人、巨人の核たる部分 |
超大型…巨人の基本アイデンティティ、大きくあること | ||
顎…巨人の強さの象徴、攻撃性と最強硬度 | ||
次女ローゼ巨人 | 女・母・ヒトとしてのユミル | 女型…子を産むという生物学的機能デザイン |
鎧…子や愛する人を守りたいという防御・防衛性イメージ | ||
戦鎚…道具を使うという人間の特性を表す | ||
三女シーナ巨人 | 奴隷としてのユミル | 車力…荷物運搬業の別名、奴隷としての労働行為を象徴 |
獣…人以外の生物、人として扱われない奴隷のメタファー | ||
進撃…終わりの巨人、自由を求める隷属性のアンチテーゼとして |
皆さんご存知、エヴァンゲリオンのマギシステムを参考にしています。3つの巨人の特長を紹介していきます。
長女マリア:超大型始祖顎の巨人
最初に巨人化したのが長女マリアだということは、根拠のない妄想ですが、きっと巨人の巨人たる要素が色濃く発現したものと想像します。当然最初の巨人化ということで「始祖」をベースにしつつ、基本である大きさとしての「超大型」、攻撃力としての「顎」を備えた巨人です。持続力や硬質化などのテクニカルな部分は、かなり削減したと思われるので、もっぱら前衛で攻撃重視の役割に起用されたことでしょう。
次女ローゼ:女型の戦鎚鎧巨人
大きさは、長女マリア巨人と比べてだいぶ小さくなった(15m級)ことが予想されます。「女型」「鎧」「戦鎚」という、人っぽさ、道具を使うというテクニカルな面が強い巨人です。サッカーで言うところのミッドフィルダー、バスケで言うところのポイントガード、ハイキューで言うところの影山、ヒュペリオンで言うところのスチーム…的なポジションだったことが予想されます。
三女シーナ:進撃の獣車力巨人
後の「車力」に代表される巨人化持続力が特徴。大きさは15m級ですが、「獣」因子のせいで、一番人っぽくない体形。補給、運搬作業や土木工事に重宝された奴隷の巨人。その隷属性を脱却するための「進撃」精神(末っ子のわがまま精神)が宿る。
…………
さて、継承するのが一人であったなら、始祖巨人の力はほぼそのまま引き継がれたと思います。三姉妹がはじめて巨人化する際、多少なりとも時間差はあったはずであり、最初の一人目が巨人化する時、残り二人が巨人化するかどうかは未確定。それなのに、一人目の巨人の機能が1/3で割り当てられるのはなぜ? という疑問が湧いてきますよね。
前項で書いた「食べる部位の順番を三人で変えて継承部位を特定した」が間違いかもです。三人が同時に背骨を食した後に、はじめて巨人化したとすれば、ちょっと疑問が解消されます。きっと、脊髄液を取り入れた段階で「道」がつながる…巨人力の送信先がマーキングされたような状態になるのでしょうね。始祖ユミルの時には1本しかなかった送信先が3本に増えたため、巨人の力を3つに分けざるを得なかった、という事情です。
わかりやすく言い換えると、
1日一杯しか提供できないラーメン屋に、どうしてもラーメン食べたいという客が3人やってきたので、3つのミニラーメンを作った
…ということです。
三姉妹の巨人運用と第二次継承計画
(注)このあたりから妄想ドラマに突入していきますので、そのつもりで読んでください。
土木工事や戦争の武力として大いに活躍した三姉妹巨人、機能は分散されましたが、三体になったことでエルディアの発展は飛躍的に加速しました。当然王は、もっと巨人の数を増やすことができないかと考えます。
この時点でわかっている継承法は、ユミルの子孫に巨人化できる親の背骨を食わすこと。巨人の数を増やすには、三姉妹に子供をたくさん産ませるしか方法はありませんが、ここで検証できていない問題が一つあります。
父親は誰でも良いのかという問題です。
三姉妹の父親はフリッツ王でしたが、彼の子種が条件であるならば、永続的な巨人継承は不可能になります。エルディア幹部は、父親は誰でもOKルールに期待しつつ、もう一つの検証方法を計画せざるを得ませんでした。フリッツ王本人は無理として、その息子(王家)の種で子を作るという検証です。
国が強大になればなるほど、フリッツ王家という身分の価値が高まっていったため、この検証は言う程簡単ではなくなっていました。王家の血が絶えるのは大問題ですが、血族が多すぎるのも家督争いを引き起こすため問題です。もう一つ、身分価値が高まったゆえに、奴隷との間に子を設けるという行為が王家の威厳を損なってしまうという問題です。
この検証は、王家と一部の家臣との間で秘密裏に計画されました。三姉妹はそれぞれ複数の男性との間に子を設けましたが、安全保障という表向きの理由で父親が誰かは一切公表されませんでした。父親の中にフリッツ王2世が含まれていたことを隠すためです。残酷だったのは、三姉妹本人たちにも相手が誰かは明かされなかったこと。フリッツ王2世以外の父親は、子供が生まれた後すべて処刑してしまうという徹底ぶりでした。
三姉妹の子供たちは、みな父親を知らないまま、すくすくと成長。洗脳教育や武術訓練のおかげで、いずれ母が死んだら巨人の力を受け継いで国のために貢献する気マンマンな子供たちです。
この頃、幹部から驚くべきアイデアが出ます。
三姉妹の自然死待つより殺しちゃって子供たちに継承させた方が巨人増えんじゃね?
論です。この時、長女マリアには5人の子供がいたので、成功すれば巨人の数は一気に5倍になります。まだまだ巨人継承に不確実性が残っていた当時、この議論は慎重派との間でかなり揉めました。
長い議論の末、ついにというかやはり人の欲望が勝り、マリアのみでテストすることに決定。(テストと言っても殺すことになってしまいますが)しかし、皮肉なことにマリアへその決定を伝える直前、三姉妹がほぼ同時に突然死してしまいました。
そう、ユミルの呪いです。
エルディア幹部たちはざわつきます。1体ならまだしも3体すべてを失うとなったら、超危機的状況です。なぜ三姉妹が死んでしまったかの原因究明は後回しにし、急ぎ第二次継承の儀へ突入です。
第二次継承の儀の全貌
- 父親は誰でも良いのか
- 背骨のみ摂取で良いのか
- 男児でも巨人化できるのか
- 子供全員が巨人化するのか
- 異なる母の背骨でも良いのか
- 巨人の数と力は反比例するか
など、当時の巨人継承にはまだまだ不明な点がありましたが、この日のために準備を進めてきたエルディア幹部たちは、背骨と子供の分配を以下の図のようにすることで、最初の一人目で一気に4つの不明点を解消しました。
公表されませんでしたが、三姉妹それぞれの最初の子供はフリッツ2世(または王でなくても初代フリッツ王の血を引く男子)=王家の血を引く子供です(図内のオレンジ色)。みなさんご存知のとうり、この3名はユミルの民×王家という特殊条件をクリアした人材で、始祖を継承すると全ての巨人をコントロールすることができ(カール・フリッツ)、その他の知性巨人を継承しても、無垢巨人のコントロール(ジーク)など一段高い巨人運用が可能です。
なぜ三姉妹の最初の子供をそうしたかというと、「父親が王家」が継承の条件だった場合を想定し、いち早く最低3つの器を確保しておく必要があったためです(一人が三人産むより三人が一人づつ産むのが早い)。3人の王家の血を引く子供が産まれた後は、王家関係なく増やせるだけ増やせー!という流れです。
ところが儀式の際、この王家の血を引く3人の子供は、背骨を与えられずに(与えるべき母の背骨は確保した上で)別室で拘束され、待機させられました。その理由は後述します。
残った10人の子供に図の様な配分で背骨を与え、巨人化するため王宮前広場に移動します。最初に巨人化に挑むのは、長女マリアと王家ではない父との間に生まれた子供で、次女ローゼの背骨を食した男子になります。
家臣が宝剣でその男子の手を少し切り、離れます。男子は練習していたとうり、精神を集中させて巨人召喚を強くイメージし、叫びます。
来たれ!巨人!
叫ぶと同時に雷鳴がとどろき、見事な巨人が秒で召喚されました。大きさは15m級で全身の皮膚がゴツゴツしている巨人、そう、9つの知性巨人の一つ「鎧の巨人」爆誕です。
離れて見ていたフリッツ2世、家臣たちは歓喜します。この成功は、継承条件不明点のうち、以下の4つを解消する大きな意味を持っていたのです。
- 父親に王家の血は不要
- 背骨以外の他の臓器は不要
- 男子でも継承可能
- 異なる母の背骨でも継承可能
残りの子供たちも次々と巨人化に成功していきます。長女マリアの残り3人の子供は「始祖」「超大型」「顎」の巨人に。(ただしこの時点で知性巨人が9体であることや各巨人の特性は誰もわかっていない)
次に次女ローゼの子供残り3人のうち二人は成功し、「女型」「戦鎚」を継承。しかし、ローゼの末っ子は、それまでの子供と同じように傷を付けて叫びましたが、何度試しても巨人化できませんでした。
シーナの子供3人は成功、「車力」「獣」「進撃」の3体です。
つまりこういうことです。ローゼの背骨は4人の子供で分配しましたが、知性巨人の枠は3枠。先に巨人化をした順に継承され、最後の末っ子には枠が残っておらず巨人化できなかったということです。
わかりやすく言い換えると、
1日一杯しか提供できないラーメン屋に、どうしてもラーメン食べたいという10人の客が来て、超ミニラーメンを作ることにしたのですが、ラーメン鉢が9枚しかなく、一人はゴメンね
という状態です。
私の妄想で背骨摂取人数を10人とし、この第三世代で9知性巨人が誕生…としましたが、それには理由があります。もとのラーメン【A】(始祖ユミル巨人)を3つに割ったミニラーメン【B】(三姉妹巨人)からは、そこからさらに最大3つまでの超ミニラーメン【C】しか作れないということです。
例えばローゼの背骨を3人以上で摂取しても、巨人化できるのは3人まで。逆に2人だった場合、ミニラーメン【B】を2つに等分した超ミニラーメン【D】が作られるのです。この【D】も【C】と同じく、これ以上分けられない最小単位(これは勝手な決めつけですが)で、以降の世代に継承しても【D】は2杯(2体)のまま、知性巨人は合計8体となり、物語が成り立ちません。
ローゼの背骨摂取が2人の時、【D】2杯じゃなくて【C】2つ分と【C】の2杯にしたらいいんじゃね?という意見もありますが、これは違います。この説が正しいとするならば、第一次継承(ユミルの三姉妹)の際にすでに9つに分けていたことになり、その意味が分かりません。
背骨の摂取はすなわちラーメンの注文です。
第一次継承の時は3つ注文が入ったので3つに分けただけ、それ以上でも以下でもありません。ローゼの背骨に対して2つの注文が入った場合、片方が多くて片方が少なかったらケンカになりますよね。なのでちゃんと2等分して【D】を作ります。私ならそうします。
ローゼの背骨を一人しか摂取しなかった場合、ローゼ巨人と同じレベルの巨人【B】が継承されます。その次の世代で3人以上が摂取すれば【C】三体に分かれます。なので継承の儀は、一人が背骨摂取→巨人化チャレンジではなく、資格保持者全員が背骨摂取した後→巨人化チャレンジという流れになります。そうしないと最初の一人目に【B】が継承され続け、いつまでたっても3体のままなのです。
また、巨人の継承と増産は、エルディアにとって超重要課題。三姉妹に一人しか子を産ませない理由はありえなさすぎるので、「第三世代で9つの知性巨人が産まれた」は確定なのです。
…………
さて、別室に隔離されていた王家の血を引く三人の子供は、その他の子供の巨人化が成功した後、背骨も与えられず秘密裏に処刑されました。巨人継承に王家の血は無関係であることが判明したこと、そして王の血族を無駄に増やし過ぎないためです。以降、王の一族はユミルの民ではないエルディア人同士で子孫を紡ぎ、エルディアを統治していきます。ユミルの民と巨人は、あくまで奴隷なのです。
そして第四世代へ
第三世代で9体に巨人を増やしたエルディアが、さらに領土を拡げ支配力を強める中、一つの事件が発生。顎を継承した女児(マリアの末娘)が病に倒れ、あらゆる治療を施すも回復せず、亡くなってしまったのです。
数年前の継承の儀で、なぜか巨人になれなかったローゼの末っ子が、亡くなった女児の背骨を摂取します。果たして巨人化は成功し、無事に顎を継承できました。このことで、13年寿命ルールがはっきりとしました。他の8人が13年後に突然死した際に彼は生きており、彼が継承してから13年ちょうどに息を引き取ったからです。
…………
第三世代の時点で、巨人継承についてまだ以下の点が未確定でした。
- 一人の背骨から3人までしか巨人化できないのか
- さらに巨人を増やすことで力が弱まるか
- ユミルの民男子とNOTユミルの民女子との子は継承可能か
ですが、第四世代への継承時に全て判明しました。巨人は9体が最大数で能力はそのまま継承される、ユミルの民男子とNOTユミルの民女子との子は継承可能という結果。きちんとユミル子孫(ユミルの民)を維持し、手順さえ間違えなければ、巨人継承はそう難しいことではないことがわかりました。
ここまでのおさらいですが、この時代の知性巨人継承方法は、先代の死後すぐにユミルの民がその脊髄液を経口摂取。そして無垢の巨人はまだ誕生しておらず、本気の民族浄化もまだ始まっていません。
マーレの大都市ラーゴ壊滅作戦の真実
114話「唯一の救い」で、マーレの歴史教科書の一部が語られます。1,200年前に、無垢巨人の侵攻でマーレの都市を壊滅させた「ラーゴの惨劇」「モンテの惨害」「ヴァレの惨禍」の話です。
エルディア復権派だったグリシャは、マーレの捏造でそんな事件はなかったと言い切っています。戦勝国による歴史捏造はよくある話ですが、この都市壊滅は実際にあったものと考えます。ただし、無垢巨人の侵攻ではなく9つの知性巨人での侵攻です。あの9体があれば、当時の都市は十分に壊滅できたでしょう。
1,200年前という時代が正しいものとして、この時期に無垢巨人が産まれていないというのが私の見解です。その理由は後述します。
新型コロナ?最恐パンデミック事件!
同じく114話で、ジークの前の獣継承者トム・クサヴァーさんから、ある説が語られます。「約600年前に伝染病で世界の人口激減」「ある日を境にユミルの民がその病にかからなくなった」という出来事から、始祖の巨人がユミルの民の身体の設計図を書き換えて病を克服した、という大胆な説です。
クサヴァーさんの研究では、王家の血を引く人間と接触さえすれば、始祖の継承者が王家の血を引いてなくともスーパーパワーを引きだせる、ということまで解明してました。600年前のそれもきっとその裏技だったのでしょう。
このパンデミック終息後の世界をちょっと妄想してみます。
約600年前というと、始祖巨人誕生から約1,100年後、ラーゴの惨劇から約600年後です。この時代まで来るとエルディア帝国はほぼ一人勝ち状態で、かなりの国や地域を植民地化できていたでしょう。帝国史の初期、ユミルの民は奴隷でしたが、そうするとエルディアが打ち負かした敗戦国の民は奴隷以下の存在になります。扱いがひどすぎると反乱が起きるため、敗戦国が増えるとともにユミルの民の地位は向上していったと考えられます。おそらくこの頃にはエルディアの平民くらいにはなっていたのではないでしょうか。
そこへ来て、伝染病を克服した病に強い民族という要素も加わります。戦勝国民族かつ病に強い血を取り入れて有利に生きたい、という思考は自然な流れではないでしょうか。つまり、自ら進んでエルディア人(ユミルの民)になった敗戦国民がけっこういたと考えます。123話「島の悪魔」でキヨミさんが「当時ユミルの民の血を取り込むことが高貴である証だった」とも言っていましたし。
このことは、当時まだ無垢巨人が産まれていないことを示唆しています。いくら病気にかかりにくくなるとはいえ、身分ランクが上がるとはいえ、ユミルの血を取り入れたい=注射1本で人を食い漁る醜い巨人になってしまう身体になりたい、とは断じて絶対確実に誰も思わないはずです。
無垢の巨人が生まれるのは、もっと後の時代なのです。
注射器の誕生によって生まれたアイツ
88話「進撃の巨人」で、フクロウことエレン・クルーガーは、1700年も民族浄化が続いたわけがない、と言います。確かに巨人の圧倒的武力をもってすれば、せいぜい200年もあれば浄化完了できそうな気がします。1700年は、マーレがエルディア人に罪の意識を持たせるため、不当な扱いを正当化するため、だいぶ盛った数字だと考えられます。
実際に民族浄化的な行為はあったとは思いますが、エルディア帝国史のだいぶ後の方だと考えられます。ではなぜ、植民地支配から民族浄化に切り替わったのか。そこに無垢巨人の誕生が関与していると考えます。
いいかげん長くなりすぎたので、結論を先に言います。
無垢の巨人は
巨人化学の産物
だと考えます。どこかで聞いたことありますね、そうアッカーマン一族と同じ出自です。巨人化学とは、文字どうり「巨人化」を研究する学問、マーレ統治の時代では「マーレ政府巨人化学研究学会」という名称になっていましたが、おそらくその前身はエルディア帝国時代から長く存在していたでしょう。
巨人化学の最終目的は、巨人生成の謎を解明しコントロールすること…つまり9体しかない巨人の数を増やすことにあります。始祖ユミルの時代からあらゆる検証、人体実験を繰り返してきましたが、1000年以上9体以上の巨人は生まれませんでした。
転機となったのは、注射器の発明です。現実世界での注射器発明は1850年頃、今からたった170年くらい前、進撃の世界においてもだいぶ浅い時代に登場したものと考えます。注射器によって、
- 巨人の脊髄液を気化させずに採取
- 巨人継承者の脊髄液を生きたまま採取
することなどが可能になったため、できることの幅が広がりました。数々の実験が積みかさねられた結果、ついに無垢の巨人が誕生しました。巨人化薬の開発に成功したのです。
私の考える巨人化薬は、知性巨人の脊髄液と知性巨人継承者の脊髄液をブレンドしたものです。ただしポイントは、巨人と継承者は別であることです。例えば、車力巨人の脊髄液とピークの脊髄液をブレンドしてもダメ。これについて根拠はありませんが、ちょっとだけ理屈はあります。この理屈を語ると長くなりすぎてしまうのでここでは省きます。
巨人化薬は、知性巨人の脊髄液(後に無垢巨人の脊髄液でも可となった)を採取して冷やし、専用の器具で空気に触れないよう継承者の脊髄液と安定剤(隠し味)をブレンドし、生理食塩水で濃度を調整して完成します(注:妄想です)。ユミルの民に、この薬液を経口または皮下注射にて体内に摂取させ、出血を伴う外傷を与えると、もれなく巨人化に成功しました。薬液の摂取量で巨人サイズのコントールが可能なことも後々わかってきます。
この、コントロールが効かない巨人の生成は、世紀の大発明でしたが、その後の歴史に大きな影響を与えることになります。
…………
ちなみにアッカーマン一族は、これより後に生まれます。ギリギリ巨人化しない濃度の巨人化薬を投与し続け、フィジカル数値が向上する体質のユミルの民を掛け合わせて作られました。ただし、はじめからその目的で実験していたものではなく、あくまでも自身の意志で巨人を発現させるという巨人化コントロール実験からの産物です。
無垢巨人運用と民族浄化のはじまり
無垢の巨人(無知性巨人)の基本的な運用は、みなさんもご存知のとうり敵国陣地内で数体巨人化させるというシンプルなもの。巨人化させられるエルディア兵(ユミルの民)は、当時自分が巨人化することは知らず、同行潜入したエルディア兵から注射されます。この注射役は全力で離脱・帰還することを命じられていますが、初期のころはそのことも知らされていなかったようです。
敵兵を壊滅させて、夜になり動きが止まったところを、エルディア兵もしくは知性巨人がうなじを破壊します。放っておくと、自国領地を襲う危険があるためです。回収できない兵器は破壊する、これは戦場の鉄則ですね。
この無垢巨人は、味方も襲う、命令を聞かない、再利用できないという扱いづらい点がありましたが、それでも人間のみを虐殺しまくる強力な兵器として帝国内で急速に認知されていきました。王家と8つの分家は、帝国内での覇権争いのためにユミルの民確保に奔走することとなりました。
そう、これが本気の民族浄化のはじまりです。
王家と8つの分家は、国力強化を名目に、本音では自軍の兵力増強のため、ユミルの民を増やし続けていきました。当時は巨人化薬の存在や、ユミルの民が条件であることも伏せられていたため、身分ランクアップや税制優遇などのキャンペーンで、移住や自発的な民族交配の推進は順調に進みます。また、敵国侵攻時には、強制的なそれもある程度行なわれていました。
表向きは植民地統治でしたが、裏では民族浄化という名の兵器生産が進行していったのです。そうして今でいう核弾頭のように、無垢の巨人という強大だが使われない兵器、しかし自国の首を絞めかねないモノが、エルディア帝国を静かに埋め尽くしていったのです。
そして巨人大戦へ
エルディア帝国に対抗できる国が近隣諸国になくなったころ、人の攻撃性と闘争心は内乱という形に変化します。そう、巨人大戦です。ここも妄想しだすとキリがないので割愛しますが、とにかくこの大戦を契機に、無垢巨人の恐怖、ユミルの民が巨人化条件であること、が全世界に知れ渡ることになったのです。
大戦中、多くのユミルの民が非道に巨人化され、帝国が崩壊するほどの犠牲を積み上げました。徴兵されたユミルの民の多くは、家族を人質に取られ、こう言われます。「子供を巨人にしたくなかったらお前が巨人になれ」と。
形の上では反乱軍(タイバー家+マーレ)の勝利、正規軍(フリッツ王家)はパラディ島へ追いやられる格好となりましたが、大陸に残されたユミルの民には絶望と憎しみしか残っていません。注射1本で人を食うバケモノになることを伏せられたまま、その血を繁栄させられてしまった絶望、兵器として強制された非人道的な扱いによる憎しみ。その深き憎しみは、マーレの情報操作もあって、以後100年以上に渡ってフリッツ王家と島内エルディア人に対して向けられることになります。
「悪魔の末裔」と。
妄想まとめ
今回のまとめです。
- 3姉妹の継承巨人はそれぞれ3つの能力を内包
- 9つの巨人は第3世代で分かれて確定
- ラーゴの惨劇に無垢巨人はいなかった
- パンデミックでユミルの民の地位向上
- 無垢の巨人は注射器の発明で生まれた
- 民族浄化は無垢巨人の軍拡目的が理由
- ユミルの民が巨人化することは大戦時に露呈
年表貼っておきます。
以上、無垢の巨人がいつ生まれどう運用されてきたか考察(妄想)してきましたが、マーレ政府が伝える歴史とはちょっと異なります。進撃の巨人を読まれた方であれば、伝えられる歴史が真実とは限らないという事は認識済みかと思います。この「前提を疑ってみる」という視点の柔軟さは、社会に出てから直面する課題の解決にけっこうマジで役立つので、ぜひ覚えて帰ってください。
次回は、今回長くなりすぎて書き切れなかった「マーレ軍エルディア人部隊の実態とは!」をお送りします。
おしまい