【青年漫画：完結】暴力と痛みの哲学書「殺し屋1（イチ）」│山本英夫／ヤングサンデー／小学館

2018.12.04
トラウマ漫画
SM, いじめ, トラウマ漫画, ヤクザ, 変態, 妄想, 拷問, 暗殺, 暴力, 殺し屋, 身体改造

ハイ来ました。コレ、マジなやつです。

超有名作品ですが、まだ読んでない方のためにあまりネタバレしない範囲でご紹介しましょう。

ま～～エグい描写マシマシのトラウマ確実スーパー胸糞バイオレンス外道妄想マンガ（褒め言葉）ですが、不思議と読後の後悔感はありません（人による）。「ショッキングなシーンや暴力シーンを表現する」以外のメッセージや問題提起がしっかりとこのマンガの中にあるからです。

あと、小学生～中学生くらいのお子さんがいらっしゃる親御さんにおすすめです。「最近、娘が友達と都心の方によく遊びに行くようになってしまった…」なんて心配をされているお父様お母様は、ぜひ娘さん（息子さん）に「殺し屋-1-イチ」を買い与えてみましょう。

歌舞伎町には絶対行かなく（行けなく）なります。

1. 基本情報
2. 名言祭りやぁ！　暴力と痛み、愛とSMの哲学書
3. 先取り！身体改造！
4. この作品の真の主役「ジジィ」とは
5. まとめ
- 5.1. トラウマポイント
6. 勝手にマリアージュ　～このマンガに合う曲～
7. 世の中には2種類の人間がいる　「殺し屋1」を読みながら平気でメシ食える奴と食えない奴だ

基本情報

読みだしたら止まりません。

（こればっかり）

今は亡き（休刊でしたっけ？）週刊ヤングサンデーで連載されていた、「これぞウマコン」ってマンガです。ヤンサンは「ムジナ（相原コージ）」とか「マイナス（沖さやか）」とか「ショートカッツ（古屋兎丸）」とか「傷だらけの天使達（喜国雅彦）」とか、けっこう好きなマンガがあったなぁ～。

もう20年くらい経つのに、何度読んでも、未だに面白いです。

●作者：山本英夫　全10巻　2001年完結　

●新宿歌舞伎町のヤクザマンションが舞台

●過激な暴力描写が特徴

●2001年に三池崇史監督で実写映画化、その他OVA化も

導入はこんな感じ…

舞台は新宿歌舞伎町にある通称「ヤクザマンション」。組事務所や組員住居、SMクラブ、賭博場など、8割が暴力団関連というマジヤバいマンション。そこに事務所を構える「安生組」の組長が、隠し金庫の3億円と愛人とともに忽然と姿を消すーーーーー。

あらすじ書きすぎると驚きがなくなるので、詳しくはお読みください。

言いたいことはいろいろありますが、「殺し屋１」のおすすめポイントその１

他で見れない斬新な絵面（えづら）

マンガと小説の一番の違いってなんでしょう？　そう、当たり前ですが、「絵があるかないか」ですね。でもこれ大事で、「誰も見たことがないシーン・他のマンガでは見ない絵面」がどれだけあるかが、マンガの面白さのバロメーターの一つではないかと考えます。記憶に残りますしね。
「殺し屋1」には、そんなシーンがメガ盛りです。

●大の大人が泣きそうなのを我慢して「泣いてないもん……」と言う

●靴と靴下以外全裸のヤクザが、片手首を切り落とされながらもマンションの廊下を希望に向かって全力疾走する

●テレビの中から何が見えるか気になって、テレビの中に入ってみた

●猫が魚のようにビチビチと跳ねている

●チ○コ縦割り（計2回）

文字で書くと意味わかりませんが、ぜひマンガでご確認ください。

名言祭りやぁ！　暴力と痛み、愛とSMの哲学書

絵面のインパクトはもちろん凄いのですが、それだけではないのが「殺し屋1」の魅力。

安生組の若頭で、後に垣原組の組長となる垣原雅雄（かきはらまさお）というキャラクターが登場します。殺し屋である「イチ」と並び、この物語のもう一人の主人公。絵に描いたようなバイオレンスヤクザ組長で、躊躇なく遠慮なく率先して暴力を行使しまくります。しかしこの人、ただの野蛮な人間ではなく、振舞う暴力には確固たる哲学があり、むしろこの人の人生哲学が暴力（痛み）そのものである、と言っても過言ではないほどの必然性重視主義コンセプトマゾヒスト変態大王です。そこにシビれ、あこがれます。

( *´艸`)ﾑﾌ

自分が知ってるつもりでいたSM認識が、いかに浅かったかを思い知らされました。こういう下手をすると局所的で独りよがりな「論（メッセージ）」を、コンテンツとして昇華させ、魅力的なエンターテイメントに構築できる山本英夫先生の才能は素晴らしい……あえて言おう「名作」であると！

( ｀ー´)ノｼﾞｰｸｼﾞｵﾝ!

ホント日本に生まれて良かったと思える名作です。

…え～と何が言いたかったのかというと、垣原先生の名言群がおすすめポイントその２だということです。

( ｀ー´)ノｼﾞｰｸﾅｵﾝ!

＜ピアスのマーボーこと垣原先生の愛のSM名言集＞

「オマエの暴力には愛がない。」

（第1巻）

「痛みを制してるのは皮膚じゃねぇ……脳みそだ。」

（第2巻）

「てめェのような痛みを憎しみに思うようなヤツは信用できねェんだよ。」

（第3巻）

「痛みを与える時は痛みを与える喜びを噛みしめろ。それが相手に対して最高の思いやりだ。」

（第4巻）

垣原先生っ！つ…ついて行きますっ！！

∠(｀・ω・´)

…他にもイロイロ。

ぜひマンガの中で、あなただけの名言を見つけてください。

先取り！身体改造！

最近、クレイジージャーニーでケロッピー前田さんが登場する回で、「身体改造」が取り上げられるようになりました。超面白いです。まさかテレビでこんなん見れる時代になるとは思ってもみませんでした。

で、約20年前のこの「殺し屋1」の中にすでに「身体改造シーン」が出てきます。入れ墨、ピアスは当然、「ボディサスペンション（さらに【ボディサス×オイル】という新しいスタイルも開発！）」「サブインシジョン」など、先取りすぎます。また、山本先生の次作「ホムンクルス」にも、「トレパネーション」が出てきます。

（↑ちょっとグロい画像とか出てくるのでリンクは貼りません）

で、7巻で垣原先生は、人が身体改造を行う理由を「不老長寿への願望」「首から下を全て機械化したいという欲求」だと説明します。それも「すげェ！なるほど！」と思いましたが、その時に見せていただいていた図の元ネタが見つかりましたので、リンク貼っときます。

動物の頭を灌流するための装置

というアメリカの特許です。US 4666425 A

The Lens - Free & Open Patent and Scholarly Search

US 4666425 A - Device For Perfusing An Animal Head The Lens - Free & Open Pat...

https://www.lens.org/lens/patent/US_4666425_A

The Lens serves almost all the patents and scholarly work in the world as a free, open and secure digital public good, with user privacy a paramount focus.

当時、誰がどうやってこれ見つけたんですかね？　オドロキです！

2019/5/21追記

あのケロッピー前田さんが途中から情報提供者として関わっていたそうです、納得！

こちらの記事参照（山本英夫『ホムンクルス』の題材となったトレパネーション、その歴史に迫る映画『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』）

追記おわり

で、この話の動物実験映像っぽい動画があったのですが……リンクは……自粛します。（ただフェイクという噂も…）

この作品の真の主役「ジジィ」とは

全てのキャラクターをコントロールし、この物語全体を仕切っているのが、名前の出てこない「ジジィ」。「面白いことが見過ごせない」という、一見大したことない行動原理のためだけに、老け整形したり、おそらく大量の資金を投じたり、命をかけています。明らかに異常です。もしかしたら「ジジィ」が一番異常かもしれません。

「ジジィ」が、「なぜ安生組をターゲットにしていたのか」の直接的な原因は語られません。何か怨恨があったかもしれないし、特になかったかもしれない……。「理不尽でない暴力は暴力ではない」という言葉もあるように（ないよ）、大した理由なしに一つのヤクザ団体をつぶしたとしたら、一番の理不尽者、暴力者は「ジジィ」である。もう飛びぬけて突き抜けてヤベェやつです。

そんな「ジジィ」は、才能あるプロデューサーであり、脚本家でもあるとも言えます。「殺し屋１」は、彼が苦労し手間暇かけて、なんなら人生かけて作り上げた、極上のハードコアエンターテイメント……面白くないわけがない！

つまるところ「殺し屋１」は、「ジジィ」に対して「なんでこの人はこんなことしてるんだろう？（できるんだろう？）」という読者の妄想が最大限膨らむよう、緻密に計算された極上の妄想燃料投下マンガなのです！

（なんかうまくまとまった！）

あと表の主人公（ヒロイン？）の「殺し屋イチ」も、ひっじょーーーーーーーに魅力的なキャラクターですが、あえてここでは詳しく触れません。垣原組長と同じように「あなた自身が、正体不明の最弱であり最強のサディストキラーから狙われている」と妄想しながらアマゾンGOです。でも一言だけ↓

こんな殺し屋見たことねぇわ！！！（喜）