【音楽】と【映画】ドイツのインダストリアル実験音楽バンド:EINSTÜRZENDE NEUBAUTEN「半分人間」

【音楽】と【映画】ドイツのインダストリアル実験音楽バンド:EINSTÜRZENDE NEUBAUTEN「半分人間」

しつこくインダストリアル攻め作戦?の第4弾。

ドイツのアインシュテュルツェンデ・ノイバウテン(EINSTÜRZENDE NEUBAUTEN)」という『舌噛みそうな名前のバンド名大賞』で優勝しそうなグループの紹介です。

もう結成から30数年経つ「師匠」クラスですが、いまだ現役で唯一無二のサウンドを発信し続けています。

アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンとは?

まず基本情報を。

●1980年ドイツ(西ベルリン)で結成 現在も活動中

●メンバーチェンジはいろいろあったがボーカルのブリクサ・バーゲルド(Blixa Bargeld)を中心に4~5人

●インダストリアルミュージックの代表的存在

●メタルパーカッション等の自作楽器でのサウンドが独特

●歌詞は基本ドイツ語

●1981年のデビューアルバム「Kollaps」から2014年「LAMENT」まで11作のアルバム発表

●バンド名の意味は「崩壊する新建築」(手抜き工事発覚!みたいな?)

●シンボルマーク(一つ目人間)が超かっこいい

●ラジオとかで絶対流れない(誰もリクエストしない?)

■公式サイト

メタルパーカッション等の自作楽器でのサウンドが独特」と書きましたが、音楽としてはここが最大のポイント。

ギターやベースやシンセサイザーはあったりするのですが、いわゆる普通のドラムセットがありません。曲やアルバムごと(なんならライブごと)に進化する【オリジナル打楽器サウンド】が、ノイバウテンでしか味わえない強み・オリジナリティであり、それがスタートから最新まで一貫されています。

ただその発端は、「お金がなくて仕方なくドラムセット売っちゃった」という悲しい理由。

衝撃の映画【半分人間】

当時、メタリカなどのスラッシュメタルにはまっていました。それだけで十分「人とは違うものを聞いているぜ」感に酔っていたのですが、ノイバウテンを聞いて(見て)、ガツーンと衝撃を受けました。

「こんな音楽もあるのか!?」

と。

で、最初に聞いた(見た)のが、ノイバウテンを題材にしたドキュメンタリー映画「半分人間(1/2MENSCH)」でした。ドキュメンタリーというよりは約1時間で10曲くらいのPV集みたいなモノです。

1985年のサードアルバム「半分人間(Halber Mensch)」の曲が中心に演奏されています。

まずは1曲どうぞ↓

Einstürzende Neubauten – Sehnsucht from neubauten.org on Vimeo.

「な…何この異様なハイテンション?」

静から動の振れ幅がスゴイっ!

な…何をみんな叩いてるの!?

これ何語?

廃工場カッコいいいいいいっ!!

秒でハマりました。

実は上の曲の前にオープニングで「アルメニア(Armenia)」という曲で映画は始まります。その映像は公開されていませんが、正確にはこの1曲目でハマりました。で、今でもこの曲がノイバウテンで一番好きな曲です。

映画バージョンではありませんが聞けます↓

※セカンドアルバム「患者O.T.のスケッチ(Zeichnungen des Patienten O. T. )」に収録。

この映画、1986年公開ですが日本で撮影されており、「爆裂都市」でおなじみの石井岳龍(改名前:石井 聰亙)さんが監督です。

で、作中で演奏に使われた自作楽器やチェーンソーなどのスペックが紹介されます。

あ…新しい!

Einstürzende Neubauten – Letztes Biest from neubauten.org on Vimeo.

映像の演出上、「大量のミミズや回虫やらヤスデっぽい虫(本物)などがメンバーの足を徐々に食い尽くす」なんて、サラッとトラウマシーンを放り込みつつ、中盤からちょっと(だいぶ)個性的なダンサー達がコラボします。

【白虎社(びゃっこしゃ)】という【暗黒舞踏(あんこくぶとう)】の集団です。

白塗りの奇怪な恰好をした集団が、奇声を発しながら、奇怪な動きで前衛な舞踏を披露しまくります。もう…絵面がとにかくヤバい…「見てはいけないものを見てしまった」感100%です。子供が見たらトラウマ必至でしょう。

※はじめ、「アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン」というモノが、演奏と舞踏がセットになったパフォーマンス集団かと勘違いしましたが、白虎社はこの映画だけの出演でした。

※この映画のソフトについて、英語版DVDはありますが、現在入手困難。

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最近はすっかり丸くなってしまった問題

このノイジーで魅力的なハイテンションは、1993年の6作目のアルバム「タブラ・ラサ(Tabula Rasa)」を分岐点とし、以降息を潜めます。

それから、静かな大人のノイバウテンが続きますが…いや…別に問題ではないんですけどね。初期のサウンドでファンになった人にとっては、ちょっと物足りないのが正直なところです。

でも、あいかわらずのメタルパーカッションや自作楽器で創り出される楽曲の、静かですが独創性の高いサウンドは、そんじょそこらのオルタナ小僧には出せない豊潤で熟成された“旨み”があります。ノイバウテンでしか聞けない音がそこにあるのです。

もうね、むしろオシャレですよ。ロックだとかインダストリアルだとか一切興味ない方に、逆に受け入れられるのではないかなと思います。

初期の頃の曲をもう一つどうぞ。

Einstürzende Neubauten – Autobahn from neubauten.org on Vimeo.

ど…どうした?キミたち!?

な…何を訴えたいんだ?

いったん落ち着こ? な? な?

とオロオロしちゃいます。

でもなんだか楽しそう。

(*´▽`*)

アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン トピック

ここから、初期のアルバム4枚が無料で聞けます。

いい時代になりましたね。

シンボル戦略の大成功事例

ノイバウテンと言えば、この一つ目人間マーク。

ノイバウテン 一つ目人間

デビューアルバムのジャケットから最新作まで、ノイバウテンのアートワークに登場し、トレードマークとなっています。ノイバウテンが世界的に浸透した要因の一つは、このロゴデザインでしょう。

音楽も実験的、バンド名も歌詞も聞きなれないドイツ語という、わかりにくさ度の高いコンテンツをシンボル化+継続することで、異なる言語の国においてもこのロゴを見た時に「あぁ、あの金属をガンガン叩いているあいつらね。」という共通言語で認識しあえるのです。

当然そうなるためには、他にないデザインでなければいけないし、あまり複雑であるといけないし、なによりかっこよくなければならない。これらを全て兼ね備えた秀逸なロゴデザインなのです。

リーダーのブリクサさんは、「アメリカの古代トルテカ文明のペトログリフ(壁画)から」と語っているそうですが、壁画そのものの複写か、壁画をもとにデザインしたのか詳細は不明です。

ちなみに浦沢直樹さんの漫画「モンスター」の中に、このロゴが出てきます。建物の壁に落書きとして書かれていますが、ノイバウテンが好きで書いたのではなく、おそらくドイツの建物を写した資料写真にあった実際の落書きを、アシスタントさんが忠実に再現したのでしょう。で、アニメ版にもそのまま再現されているとのこと。

↓これは映画ではなくCD

でも個人的に一番好きなアルバムはこれ。

「良い子はハヤリダ!」