【不条理ホラー映画】祝!製作40周年!色あせないトラウマ名作『ポゼッション』は脚本と演技力で神話となった!
40周年ってmjk!? ポゼッションってどんな映画?
アンジェイ・ズラウスキー監督の「ポゼッション」、だいぶ古い映画ですが、後世に伝えたいトラウマ名作です。この映画についていろいろ検索していたら、製作40周年を記念してのリバイバル上映されるとのこと。良いタイミングですので長すぎにならないようご紹介しましょう。
なかなかジャンル分けしにくいですが、「不条理ホラー」とか言われています。中には「ラブロマンスだ!」という人も。(そうとも言えます) なかなか一言では言いにくいですが円グラフにするとこうだ!
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「キモいしわけわかめ」と低評価の人と「すげぇ!フェイバリッツ!」となる人と、両極端に別れる映画かなと思います。
私ですか? 当然ウマコン映画トップ10に入っていまスキー!
■ポゼッション40周年HDリマスター版リバイバル上映公式サイト
■予告編
■劇場公開情報(2020年)
この1月2月がチャンス!
東京 | 新宿シネマカリテ | |
東京 | アップリンク吉祥寺 | |
横浜 | 横浜シネマリン | |
名古屋 | シネマスコーレ | |
京都 | 出町座 | |
大阪 | 第七藝術劇場 | |
神戸 | 元町映画館 | 3/7(土)~3/13(金) |
愛媛 | 松山シネマルナティック | 未定 |
※劇場に足を運ばれる際には必ず公式サイトでご確認ください。
新宿シネマカリテで見ましたよ! やっぱスクリーンの迫力はいいですね。デジタルリマスターで映像も音もだいぶクリアな印象です。
基本情報
約40年前の海外映画です。何件か回りましたが、最近のレンタルDVD屋さんには置いてないですね。Netflixみたいな動画配信サービスでも調べてみましたが、どこにもないですね。
なので今回の40周年リバイバル上映は、ホント貴重な機会です!
●1981年公開 西ドイツ・フランス合作
●124分 PG-12
●監督・脚本:アンジェイ・ズラウスキー(1940-2016)
●西ドイツが舞台の夫婦喧嘩サスペンスラブホラーミステリーアクション
●主演:イザベル・アジャーニ サム・ニール
●原題:POSSESSION
「ポゼッション」という言葉は、「所有」「占有」などの意味がありますが、もう一つ「悪魔が取り付くこと」という意味も持っています。ですが、よくある悪魔憑き・悪魔払い系映画ではありません。
◼️あらすじ
西ドイツ、ベルリン郊外。単身赴任を終え、妻子の待つ我が家に帰って来たマルク。だが、妻アンナの態度はどこかよそよそしい。アンナの友人マージからある“男”の存在を聞いたマルクは妻を責めるが、彼女は浮気を認めるどころか夫を完全に拒絶する。混乱と悲嘆の中、一人息子のボブを学校に送ったマルクは、そこで妻とそっくりの教師ヘレンと出会う。やがて問題の“男”ハインリッヒと顔を合わせることになったマルク。しかし、彼もアンナの全てを知っている訳ではなかった。新たに浮上した“第3の男”の真相を追い求めるマルクは、探偵にアンナの尾行を依頼するのだが――
引用:ポゼッション40周年HDリマスター版公式サイトより
はじめは、不倫とか離婚とか昼メロみたいな展開で油断してしまいます。途中からだんだん不穏な空気になっていき、ヤバさがエスカレート。ラストに向かって、めくるめく予想のナナメ上展開が、観ている人を置いてきぼりにします。
ぼやぼやしてると置いていくぜッション!
という感じです。
複数回観ることをおススメします。
それにしてもホドロスキーさんもそうですが、「○○スキー」って名前の監督は、作品のクセがすごいですね。
ポゼッションってどんなホラー?
「不条理ホラー」とは言われていますが、でたらめだったり荒唐無稽すぎたりはしていません。(まぁだいたいのホラーも不条理と言えると思いますが…) ですが、各状況の説明がない(少ない)ので、初見ではシーンの把握に苦労します。
説明がない(少ない)のは、エンタメコンテンツとしては不親切ですが、個人的にはリアルさが増して好感が持てます。難解=良いとは限りませんが、いわゆる通常のホラー「恐怖のモンスター(殺人鬼)などにどう打ち勝つか?」みたいな、
話の目的(ゴール)がポゼッションにはありません。
「予測(理解)ができない不安さ」というのは、見た目だけの怖さを凌駕すると考えます。
このポゼッションは、突然ショッキングなシーンや大きな音響で「脅かす」タイプのホラーシーンはありません(少しはある)。「なに…これ…ちょっと…ヤバくね?…うわ、これヤッバ!」って感じで、心理的に重くのしかかってくるヤバさでご飯3杯いけます。
見どころ①:イザベル・アジャーニのマジ体当たり演技
妻「アンナ」と、息子が通う幼稚園?の先生「ヘレン」の一人二役をこなした、フランスの女優「イザベル・アジャーニ」さんがこの作品のカギ。超絶美貌に加えて、高い演技力が評価され、カンヌ最優秀主演女優賞など数々の賞を受賞。
この作品では、何かに取り憑かれている狂気っぷりが目立っていますが、
①普通の状態
②完全にイっちゃってる状態
③両者がせめぎ合っている状態
この3つを無段階的に違和感なく演じきれているのがスゴイ…恐ロシアっ子!
中でも、
地下道コンテンポラリーエクストリーム出産ダンス
のシーンは超有名! トラウマ! ヤバイ!
これは「決して見てはいけないもの」ですね。でも私は、これ見てハマりましたよ。夫「マルク」役のサム・ニールさんも、映画の前半で嫉妬に狂ってもだえるコンテンポラリーを披露していますが、イザベルさんの圧勝です。
※ズラウスキー監督の前作「悪魔」にも、類似のシーンがあったそうなので、イザベルさんのインプロヴィゼーションではなく、演技指導もあってのシーンではあるようです。
見どころ②:不条理の怪物
注!このへんからネタバレ含みます。
妻アンナが産み、匿い、育てる「モンスター」が、素晴らしくキモい(褒め言葉)! CGもまだ発達してない時代なので特撮ですが、このクリーチャーの造形と見せ方が、もうトラウマ! ゾンビとかエイリアンみたいな凶悪さはないのですが、
生理的にキモい。とにかくキモ怖い!
生きたまま生皮剥がされた動物みたいな質感といい、人と人でないものの中間な造形といい、もう天才。
SFX担当は、「キングコング」「エイリアン」「E.T.」など名だたる名作を手掛けた、カルロ・ランバルディさん。
ただこのモンスター、超絶不快な見た目のくせに自力で移動できない「か弱さ」があります。見慣れてくると、だんだん育っていく様も可愛く思えてきて、アンナ同様に守ってあげたくなるような、母性本能をくすぐるような? 不思議な魅力があります。(個人の感想です)
ミシリー岡田の妄想解説 新説ポゼッション
説明が少なく、謎が多いポゼッションですが、「マルクの仕事」視点で妄想してみるとちょっと辻褄合う点があったりするので、ぶちまけてみます。
※以下私の妄想です。
マルクはBDNの派遣社員
マルクが所属していたのは、ドイツの連邦情報局(BDN:アメリカのCIAみたいなもの)と勝手に予想します。アイパッチくんと前ハゲピンク靴下くんは、拳銃持っていたし、警察と一緒に行動してましたので。で、マルクはそこの正社員ではなく、特定の任務のために雇われた派遣社員・バイト的な契約だったと思われます。業務完了報告をした時に報酬をもらっていたし、辞めたいって言って簡単に辞めれてますしね。
マルクの具体的な任務内容は不明ですが、レポ(連絡員)的な役割だったのかと思われます。ソ連とかの共産国側にがっつり入り込んでいるメインのスパイ(社員)は別にいて、そのスパイのサポートや、BDN側との各種連絡業務を数年間行っていたのでしょう。業務報告時にマルクは「ある人物とのコンタクト方法を紙にまとめた」とか「自分は辞めるから誰か後任を」とか言ってました。
業務報告時に上司的な人が「彼(本スパイ)はまだピンクの靴下を履いていたかね?」と聞きます。それが意味するところは結局謎ですが、マルクにそう聞くということは、社員にしか分からないステータス表示暗号でしょうか。「まだ疑いを持たれておらずスパイ活動継続可能な状況」とかね。(それでもラストの前ハゲくんのピンク靴下は謎)
あと、アンナ別宅の爆破とハインリッヒくん撲殺からのヤク中死に見せかけ処理の時の手際が良すぎです。何らかのそういう訓練を受けてたっぽい感じです。
ハインリッヒとマージはBDN正社員
アンナを虜にしたハインリッヒくんは、BDN正社員です。でもどちらかというと表に出てこない裏メンバー。持ち前のイケメンフェロモンで逆ハニートラップを得意とするが、普通の諜報活動もこなせるデキるヤツ。
ハインリッヒくんの自宅はけっこういいお宅で、大量の書籍やトレーニングマシンがなんとなくその職業を匂わせます。「妻と子供がアメリカ」というのも諜報活動と関連してそうです。そしてなにより、そこそこデキるはずのマルクを謎の格闘技で瞬殺──明らかにカタギではありません。
ちなみに息子を溺愛するハインリッヒくんのお母さんは、一見無害ですが「実は…」みたいな裏ストーリーがありそうです。
そしてアンナの友人で、この映画で一番かわいそうなマージくんもBDN職員。詳しくは後述しますが、マージくんも家がかなり豪華です(給料が良い?)。
妄想ストーリー(マルク帰国前)
マルクはある任務の連絡員としてBDNに雇われました。数年家族に会えなくなるのと、様々なリスクはありますが、暮らしを楽にするための報酬が魅力的だったからです。
その任務の話が決まってから、アンナに友人ができます。マージです。マージはBDNで、建前は敵組織からアンナとボブを保護するためですが、実際はマルクが敵側に寝返らないための人質として監視しておく役目です。マルクはそのことを知っているためマージが「嫌い」です。
アンナはマルクの任務も、マージがBDNであることも知りません。
さて、実際の任務がはじまりましたが、マルクは予想外の活躍をみせました。情報収集力、報告の正確性、偽装技術などなど、正社員に劣らない行動・判断力をもって成果を上げ続けました。BDNは、3年の契約期間後もぜひ継続してほしい、なんなら正社員登用したいと思っていました。
そのために画策したことは「マルクを離婚させること」。
本格的な諜報員にとって、愛する家族がいることは弱点でしかありません。人質にとられての裏切りリスクや、家庭を優先することでハイリスクな任務ができなくなるなどのリスクがあるためです。マルク離婚作戦のため、ハインリッヒに白羽の矢が立ちました。マージからの情報提供もあったため、作戦は上手く行き、マルクの任期が終わる1年ほど前から、アンナとハインリッヒの不倫関係が始まったのです。
マルクが帰ってくる1~2カ月前からアンナはだいぶ不安定な感じになってきました。ハインリッヒが連絡してもすれ違いになったり、会えないことが増えてきます。夫が帰ってくることでの不安や焦りがそうさせるのだろうとハインリッヒは思っていましたが、実はこの時アンナは例の悪魔を生んでいたのです。
マルクが帰ってくる直前、ハインリッヒはアンナに「二人でゆっくり(離婚するかどうかの)話をするといい」と言ってやさしさを見せつつしばらく国外へエスケープしました。
そして約3年の任務を終え、マルクが任務から帰ってきました。
ここからは映画のとうりです。
妄想ストーリー(マルク帰国後)
マルクは、アンナがあんな感じになっちゃったので業務報告時に「家族のため仕事辞める」と言いましたが、BDNにとってはシナリオどうりです。いろいろ揉めて離婚後に再度勧誘しようと考えていました。
帰ってきたらアンナがいないので、マルクはマージに電話。マージははっきりは言わなかったが、意味深な事を言ってアンナに男がいることを匂わせる。マージも離婚作戦は当然理解していたので、よりマルクを自然に疑心暗鬼にさせるためです。(あとマルクが本気で好きだから離婚作戦が成功したら自分にワンチャンあると思っている)
しかしマルクはそこから脅威の粘り腰を見せる!
不倫していることをアンナ本人から聞かされ、カフェで大喧嘩しても、3週間ホテルで自暴自棄な暮らしをしてみても、アンナとよりを戻そうとしました。「これ離婚しないんじゃね?」とBDNはちょっと焦りました。
そこでハインリッヒとマルクを直接対峙させて、「ハインリッヒのイケメンパワーで負けを認めさせよう作戦」を実行することに決めました。BDNはハインリッヒに帰国指示、マージには「マルクにハインリッヒの連絡先聞かれたら答えていいよ」指示をしました。
ここでちょっと手違いが発生。
アンナの行動は別の職員に見張らせていて、アンナが出かけたら「アンナはオレのところにいるぞ」というマルクを怒らせて行動させる電話をかけるミッションを指示していました。ところがアンナが意外にすぐ出て行ってしまったこと、マルクがすぐにマージに連絡先聞いて、すぐにハインリッヒ宅に電話してしまったことで、ハインリッヒの帰宅が間に合わずお母さんが電話に出て「まだ旅行から帰ってきてないしアンナも来てない」という謎の状況になってしまいました。
BDN側は、アンナがハインリッヒ以外の家に通っていることを把握していましたが、マルクとの離婚が成立すれば相手は誰でも良かったため、場所などは把握していましたが、深くは調査していませんでした。
で、マルクはハインリッヒに会いましたが、そこで「第3の存在」を認識し、探偵に調査を依頼、映画の本筋に入っていくのです。
マルクとアンナがいっこうに離婚しないので、組織のハインリッヒへの評価は急降下です。寝取ったはずが、別の男に寝取られているという恥ずべき状況です。上司からきつく叱責されたハインリッヒは、やけ酒飲んで強引にマルク宅へ押しかけましたが、アンナには会えませんでした。
マルクに精神的な揺さぶりをかけるために、アンナを撮影したビデオフィルムを玄関に置いたりしました。アンナの職場(バレエ教室)にも行ったんだぞ自慢を収めたこのフィルムは……特に効果はありませんでしたw
探偵の騒動により、アンナ別宅から銃声が聞こえました。これを把握したBDNは状況を見直します。アンナは3人目の男と不倫しているのではなく、敵国スパイとの接触、またはそれに類するトラブルにまきこまれていると見て、ハインリッヒにはいったん離婚作戦の中止を伝えます。
BDNは静かにアンナの周辺を再調査しようと思ったのですが、ハインリッヒは命令を無視して暴走します。「オレ様に落とせない女がいるなんて!」とプライドが許さなかったのです。マルクからアンナの住所聞いたハインリッヒはノーヘルで別宅に向かいます。銃声の件は組織から聞いてなかったので武装せず、花束&クスリというイカれた装備で強引にアンナを奪いに行きましたが、結果はあのとうりですw
ハインリッヒは変死し、マージとも連絡とれなくなったBDNは、さすがにマルクとアンナを放置できなくなりました。前ハゲくんとアイパッチくんがマルクに対して直接再雇用の交渉(=最後通告)をしに行きました。「ハインリッヒが死んだことも把握しているし、あの犬のように老衰ではない死がキミに訪れるかもよ」的な意味合いで脅しましたが、マルクの答えはノー。
まさに
「だが断る!」
翌日令状を取って、警察と一緒にマルクとアンナの身柄を押さえに行ったらあんなことになってしまいました。アイパッチくんが銃で殺されたので、目的は「拘束」から「射殺」に変更。
前ハゲくんは、アンナの「悪魔」のことは知らないので、最期に螺旋階段から飛び降りて死んだマルクに対しては、「お前、何がしたかったん?」という感情しか湧いてきません。
──────以上です。
意外とアリじゃないですか?
あともう1個「ヘレン悪魔説」という妄想解釈があるのですが、もういい加減長すぎるのでカッツアイ!
ラストシーン考察
考察というほどの考察ではありませんが、ラストシーンはまさに謎祭りなので1回見ただけでは何だかよくわかりません。
10回以上は見てみた私の解釈を書いてみます。
シーン | 解釈・考察 |
---|---|
撃たれたマルクが最後に向かった螺旋階段のあるアパートは何? | パンフレットによると、マルクの友人「エイブ」宅とのこと。脚本にはあったが映画内では描写されなかった。分かるわけがない! |
アンナはマルクを追いかけて何がしたかったのか。 | 偽マルクが完全体(もう神的な存在)になったことの喜びを唯一の「理解者」に報告したかった。(他の人々は偽マルクを見て恐れおののくだけだったが、マルクだけは理解を示しいろいろ協力してくれた) |
マルクは偽マルクを撃とうとするが、アンナは笑っている。 | 銃とか効かない存在だとわかっているので。 |
警官隊の射撃が偽マルクには当たらない。 | もうそういう存在(神っぽい存在)になっちゃったから、弾がすり抜けた? |
アンナ撃たれてマルクにキス。 | 正気に戻って「いろいろごめんね」のキス。 |
アンナ自分で自分の背中を撃って自殺。 | いろいろやらかしたことを思い出して自殺を決意。脊椎というよりは子宮を狙った? 子宮は、いろんな人を巻き込んだ悪魔を生んだ根本でもあり、この騒動の元凶である自分の不倫=女の欲求の源泉であるから。 |
偽マルク、本マルクに「楽じゃないな、兄弟」と言う。 | 監督が自身に向けて言ったメタ的な発言? 「夫婦愛を維持することも、一度心変わりしてしまった相手とやり直すことも、楽ではないな」的な。(監督の離婚体験がこの映画のきっかけになっているそう) |
偽マルク、銃声を聞いて出てきた住人(女性)に銃を握らせて、1発撃つ。 | 屋上(天国)へ逃げるための時間かせぎのために、下の警官隊に向けて撃ったのでは? なぜ女性に撃たせたかは謎。後の捜査を混乱させるため? |
偽マルク、屋上へ逃げようとする時に「オレの最期を見てろ!」と叫ぶ。 | 本マルクが階段から飛び降りようとするのが見えたので、彼の代弁を警官隊に向けて叫んだ。 |
本マルク、最後の力をふり絞って飛び降りる。① | カトリック(監督の祖国ポーランドのメイン宗教)で自殺はタブー。幼き日に愛犬が死んだ時から信仰が消えていたマルク。偽マルクという超常の存在を目の当たりにしたが、「それでも信じない」という抵抗のため、自殺=地獄落ちは怖くないという意志表示。 |
本マルク、最後の力をふり絞って飛び降りる。② | または、アンナは自殺したので地獄行き決定。自分も自殺して地獄でアンナに会いたいという一途な愛。 |
前ハゲくん、ピンク靴下をアピール。 | これが謎! |
ヘレンの所に偽マルクがやってくる。ボブは「ドアを開けないで」と言って、2階のバスタブに飛び込み死亡? ヘレンの周りで爆撃音みたいな音響が鳴り響き、照明が明滅する。ヘレンははじめ驚いていたが、最後に何かを悟ったような表情に。 | 音と照明はポルターガイスト的な、偽マルク=悪魔であることの演出。ボブはそれに気づいて避難したが、恐怖に耐えられず死亡。ヘレンは偽マルクの悪魔パワーで、ドア越しに支配されてしまった──────というのが表面的な解釈だが、監督の祖国ポーランドの第二次世界大戦の状況を暗示しているともとれる。マルクとアンナとボブのもともとの幸せな家族=ポーランド。それがヘレンと偽マルクによって占領(ポゼッスド)される。ヘレンがソ連で偽マルクがドイツ。爆撃音=戦争そのもの。 |
……と、まとめてみましたが、ぜんぜん自信がありません。謎も残ってます。自分でも見る度に解釈が変わったりしますし、まぁ、理解が及ばないこと=狂気たる所以ですから、
これでいいのだ!
||:3ミ
まとめッション
まとめに入らないと、だらだら書きすぎてしまうので、まとめに入ります。
脚本の背景
ズラウスキー監督自身が脚本も手掛けているのですが、自身の離婚体験が原案となっているようです。別れた奥さんのマウゴジャータ・ブラウネックさんも女優で美人。
別れた原因は信仰の不一致だそうですが、正確なことはわかりません。監督側としては、
『「妻が何かに取り憑かれた」とでも思わねぇとやってらんねーよ!!チックショーー!!』
って感じだったんでしょうね。
( ;∀;)
もう一つ、ポーランド(当時はほぼソ連)の体制批判だとして制作した映画が上映禁止処分になったり、製作中の映画に中止命令が出たりと、当時の国からかなり不遇な扱いを受けていたそうです。
「男女の価値観」「共産主義と資本主義」というような【身近な相容れないモノ】を起点に、「神と悪魔」「善と悪」というような【普遍的な相克】にメスを入れ、否が応でも考えさせられてしまう素敵な脚本です。
そのへんが分かってくると、全然わけわかめな映画ではありません。
悪魔は内に棲む
つねづね思っているのですが、
優れた芸術表現って、逆境とかコンプレックスとか負のパワーが原動力になっている
気がするのです。
日々の暮らしや人生に不安も不満もなく満ち足りていたら、そういう衝動って生まれない気がしません? この映画の命題でもある?「悪魔は外からやってくるのか内から生まれるか」の真がそこにあるような気がします。
「悪魔が取り憑く」と言うと外からやってくるように聞こえますが、この映画の描写だと「内から生れた」感じです。でもですね、その内から生れるモノは、捉え方・育て方次第で、神にもなるってことではないでしょうか。
だからね、
監督の不遇な経験(負パワー)からこの素晴らしい映画が生まれたように、みなさんが持っている不条理な経験も逆境も病気もトラウマも、
いずれ生み出す何らかしらの表現の糧
と捉えれば、ちょっと楽になりませんか?
ポゼッションは、そんな「捉え方の柔軟性」を高めてくれる
心の柔軟剤
のような映画です………
というように、ポジティブに捉えようと思えば捉えられる懐の深い名作だって話ですよ、奥さん!
マトメガ( ´Д`)ナガイヨ…
※本当のトラウマで苦しまれている方々を軽視したり、蔑ろにするような意図は一切ありません。
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