食事をする前に知っておくべきことがある 【ドキュメンタリー映画】 「いのちの食べかた」 感謝で救える命を探す旅かよ人生は!

食事をする前に知っておくべきことがある 【ドキュメンタリー映画】 「いのちの食べかた」 感謝で救える命を探す旅かよ人生は!

先日テレビで、お花屋さんで売れ残った花をドライフラワーにして雑貨などにして再利用する「花ロス活用」なんてニュースがありました。捨てるモノを再利用する、良いことです。その前に捨てる程作り過ぎない、というのがより良いんでしょうけどね。

「○○ロス」ってワードが「○○ハラスメント」の次に流行りそう…なんてぼんやり考えてましたが、やっぱり日本の【食品ロス】問題は、ちょっと問題かなと思います。別にそういう系の団体に所属していたりするわけではありませんが、以下は知っておいた方が良い気がします。

2015年日本の食品ロス

646万トン

国民1人当たりに換算すると、ご飯茶碗約1杯分(約136グラム)の食べ物が毎日廃棄されている計算

環境省推計

食品ロスの定義や調査が難しいので一概に言えませんが、世界の中では多い方らしいです。特に先進国では、消費段階=家庭でのロス割合が大きく問題です。何が問題かと言うと、問題が問題としてピンときていない人が多い事が問題かと考えます。「食ロスって問題ですよ~」って言われても、

・毎日ご飯1杯分も捨ててない!

・そんなに無駄に買ってない!

って思う人が多いでしょう。私もそうでした。大多数の皆さんが、今の毎日を「当たり前」と思って生活しているので、ピンと来ないのも仕方がないのです。実際この問題、捨てている当人には影響ないですしね。

そんな方に、もしかしたら「ピン」とくるかもしれない映画が、この「いのちの食べかた」です。

「いのちの食べかた」基本情報

基本情報です。

●2005年公開 ドイツ映画 92分

●PG-12指定

●原題:独: Unser täglich Brot、英: Our Daily Bread

●監督・撮影:ニコラウス・ゲイハルター(Nikolaus Geyrhalter)

●2005年アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭 特別審査員賞

この映画は、ヨーロッパ各地で行われている、農畜産物の大規模・大量生産の現場を捉えたドキュメンタリー映画。撮影もこなしている監督のニコラウス・ゲイハルターさんは、オーストリア生まれの方で、このようなドキュメンタリー系の映像を中心に作品を作られています。

この映画には、牛や豚が屠殺・解体されていくショッキング(グロい)なシーンが一部含まれています。

小さいお子様は注意しないと(JOJOに慣らしてからでないと)、肉が食べれなくなる、などのトラウマが発現する可能性があるかもしれません。この映画は良い映画ですが【PG-12指定】です。

あらすじは……ありません。本当に。以下で説明します。

この映画の見方=現代食問題の複雑性を知る

「映画の見方」とか言うと超おこがましいのですが、映画の説明を少します。

market

この映画は、普段私たちが食べている食物が、どのように生まれ、育てられ、出荷されているのかの実際の現場を見る事ができます。ストーリーもなければBGMもありません。いろいろな食物の生産現場が、ある時は美しく、ある時は残酷に映し出されるのみです。ナレーションも人のセリフ(字幕)もありません

人間機械」も説明の少ないドキュメンタリー映画でしたが、この「いのちの食べかた」は、さらに情報がありません。各シーンの理解も、何を感じるかも完全に観る人に委ねられています。

そこがこの映画の最大の優れた点だと思っています。

私はこの記事の冒頭で「食品ロス問題」を紐づけちゃいましたが、映画の中では、「世界の食品ロス○○万トン」なってテロップも、食品が廃棄されているシーンも一切ありません。「農薬散布が周辺の生態系を壊している」とか、食肉加工の残酷さを全面に出して「かわいそうでしょ、明日から肉食べるのやめよう」とか、一言も言ってません。入れたくなりがちですが、1個もメッセージが入っていないのです。

もし何か一つのテーマが提示されていたとしたら、「それについては私は賛成(もしくは反対)!」って一瞬で考察が終わってしまうかもしれません。メッセージがない故に、どう捉えるかを自身で考えざるを得ないのです。人間て毎日何か食うしね。

「あえてメッセージ性を入れないことで観た人によって多岐にわたる解釈が生まれること」が、現代社会の食に関わる問題の複雑性を、言語の壁を越えて広く多くの人に理解させるという役割を果たしている、非常に優れた映画なのですよ、たぶん。

だから邦題の「いのちの食べかた」って、ちょっと「命をいただきます、ありがとう、感謝!」というメッセージ臭がするんですよね。いや、良い事ですけどね。映画の中には岩塩の採掘シーンが出てきます。「いのち」まったく関係ありません。

原題は「Our Daily Bread(わたしたちの日々のパン[糧])」で、キリスト教の言葉らしいです。もしメッセージがあるならば、「食べ物がどう作られているかをまず知りなさい」に尽きるのではないかなと思います。

この映画の見どころ=効率的食料大量生産の現場

asparagus

いろいろな食物の生産現場が登場しますが、一つ共通するのは「大量生産~効率化」というキーワードです。田舎でおじいちゃんが野菜を自分で食べる分だけ無農薬で手間暇かけて育ててる……なんてのどかなシーンは1個も出てきません。

とにかく規模がデカい! だから、徹底的に効率化が追求されている!

農薬撒くのが飛行機だったりしますし、それぞれの作業で専用の機械がいろいろ開発されていて、その処理スピードの速さに驚きます。

「アーモンドの実ってこうやって収穫するんだ!」

「サーモンの内臓除去機……は…速ぇ!!」

「ヒヨコがベルトコンベアーで…ヒヨコンベアーーー!あばばばばばば!」

「油圧式豚足カッターを操る女は何を見上げている?」

大量の食品・家畜が、まさに機械的に生産・処理されていく様は、やはり違和感があり、非現実的で残酷にも思えます。しかし、その「目を逸らしたくなる感」が、各現場で働く人々の休憩シーンや、食事シーンが挟まれることで、急に自分の世界とリンクします。

「ああ、こういう仕事で給料を得ている人たちがいる」

「ああ、自分も毎日何か食べて生きている」

この編集は秀逸です。

殺される直前に何かを察して暴れ出す牛の屠殺シーンも印象深かったですが、一番印象に残ったシーンは、ヒマワリの収穫シーンです。人工なのか自然なのか分かりませんが、真っ黒く立ち枯れた大量のヒマワリが大型重機目線でガオンガオン伐採される様は、一瞬何を見せられているか理解できずゾッとしました。直前に美しく咲き誇るシーンがあっただけに、余計です。

まとめ

基本は何も考えず、「これは何をどうしている工程なのか?」だけを思いながら見ると良いでしょう。普段食べているものが、どう作られているかを知るだけで大きな価値があります。その後の行動は自由です。

食べ物に感謝するもよし。

興味を持っていろいろ調べてみるもよし。

残さず食べようと決めるもよし。

ヴィーガンになるもよし。

従来どうりの生き方を何も変えないのも自由です。

…で、こういう映画を見た後の感想としては、「命をありがとう、感謝」「残さずおいしく食べます」なんて感想が多いですよね。個人的には、ちょっとピンときません。

牛とか豚とか鶏からしたら、

「感謝とかいいから殺すな!食うな!」

(#`Д´)ノノ┻┻;:’、・゙

ですよ、間違いなく。

ヴィーガンにジョブチェンジしないのであれば、言うべきことは、

後で殺すために生まれさせてごめんなさい。

私たちの美味欲を満たすために不幸に育ててごめんなさい。

私たちの食欲を満たすために殺してごめんなさい。

もし巨人が私を食べても一切絶対文句を言いません。

次は人間に生まれてきてね。

モグモグ…

…でしょうかね。

※すごく偏った個人の感想です。

■「いのちの食べかた」公式サイト

予告編動画や監督インタビューやシーン解説など、必見。

この映画を見て「何かしなきゃ!でも何したらいいかわからない!」という方は、以下を参考にしてみてください。全国の食品ロス削減の取組事例です。可能なところから活動に参加してみると良いでしょう。

消費者庁ホームページ 食品ロス削減の取組事例を見る

■YouTubeレンタル ¥400~

あわせて読みたい

これ系の作品は、いろいろ考えさせられて好きです。

<19/10/1追記>

【映画】「ある精肉店のはなし」

ソフト化されてないけど、この映画も良かった。一家で牛を育てるところから、加工販売まで行う精肉店のドキュメンタリー映画。部落差別問題や、太鼓の皮貼り替え文化の話など、色々知ることができる良い作品。

その精肉店の写真集↓(映画とは関係ありません)

<追記終わり>

【本】いのちの食べかた

タイトル同名の書籍ですが、映画とは関係ありません。が、映画と同じくいろいろな食べ物はいろいろな誰かが生産・加工してくれるという事実を教えてくれるノンフィクションレポート。子供にも大人にも読んでいただきたい。

【映画】「フード・インク」

食品の安全性についての問題提起的ドキュメン映画。

【映画】「0円キッチン」

2015年オーストリア映画。捨てられた食材を使って料理を作ってまわるチャレンジ企画ムービー。

【漫画】「食糧人類」

全7巻。桐島、俺たち食糧だってよ。

【映画】「人類遺産」

食糧関係ないけど、ニコラウス・ゲイハルター監督の最新作。世界の廃墟を捉えたドキュメントムービー。人が一切出てこないらしい。コレ見た過ぎる!

「人類遺産」公式サイト

あと、ヒマな人は「フォアグラ 作り方」とか「毛皮産業」とかで検索すると、もっと人間に絶望できるかもしれません。

最後に

最後はやっぱりこの曲でお別れです。

問:牛一頭殺すのと、魚100匹殺すのはどちらが残酷でしょうか?

■釜揚げしらす/井上侑

(´∩`。)グスン

ぶ…ぶれる…ウマコンがぶれる……でも良い歌…


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※本記事は、いろいろな面で一個人の見解です。映画を見て何をどう感じるかは人それぞれですよ。

※インスタ頑張るのもいいけどね、注文したら全部食べなさいよ。じゃないとお母さん怒るよ!