【トラウマ音楽】ジョン・ゾーンルートでジャズを攻めてみる…トラウマ音楽アルバム大賞「レンツェ/ネイキッドシティ」が激ヤバすぎる件
みなさん、ジャズって聞きますか?
「ジャズ?よく聴くよ。」なんて人がいたら「オトナオッシャレ~!」って感心しちゃいます。私はあんまり聴かないし、ジャズ界のことはよくわかりません。ところが、今回紹介するトラウマ音楽は、ジャンルとしてはジャズに含まれます。「これがジャズかよ!?」ってツッコミ入りそうな音なんですけどね。詳しい人に「ジャズ聴いてみたいから、入門編プリーズ!」って相談したら、おそらく絶対100%エントリーされないであろう脇道ルートであることは、たぶん100億%確かです。
ある1枚のアルバムをご紹介
↑ネイキッド・シティ(Naked City)というグループの、1992年発表の5枚目のアルバム「レンツェ(Leng Tch’e)」という作品です。以前の記事でも書きましたが、なかなか音楽でトラウマることは少ないと思いますが、この作品は自信を持って【トラウマ音楽じゃぁ!】と言い切れる作品です。詳細は後述しますが、
ジャケット:超ヤバイ
コンセプト:超ヤバイ
サウンド:超ヤバイ
という見事な3冠達成の激ヤバ作品です。(語彙力ヤバイ)
中心人物の変態サックスプレーヤー【ジョン・ゾーン】を知る
ネイキッド・シティというグループを紹介する前に、その中心人物ジョン・ゾーン(John Zorn)さんを説明しなければなりません。簡単に言うと、サックスと作曲を担当していてる1953年生まれのアメリカ人なのですが、彼が、天才すぎてもう変態であり、変態すぎて天才な、ヤバみ深すぎ人物なのです。
子供の時から楽器には触れていたようですが、サックスを始めたのは大学生になってから。1970年代からジャズを始め、映画・演劇・漫画・民族など多彩な分野から多数の音楽スタイルを吸収し、さまざまな前衛的・実験的作品を発表しました。親日家で日本に住んでいたこともあるそうです。
ソロとして超精力的(アルバム80枚以上!)に活動しながら、複数の音楽ユニットも立ち上げ、自身で音楽レーベルも設立しちゃいます。その複数の音楽ユニットの一つが「ネイキッド・シティ」で、7枚のアルバム発表後、1993年にネイキッド・シティとしては活動を終了しています。
■ジョン・ゾーンのざっくり体系図
※間違ってたらすいません。
音楽以外にもいろいろな活動をしているようです。「何?この●●感!」って言おうとして、あてはまる日本人が思い浮かばなかったですよ!
ネイキッド・シティ基本情報
ネイキッド・シティは、天才ジョン・ゾーンさんを中心に1988年に結成されたバンド。前衛的なジャズ、実験的なロック・ハードコアサウンド、即興などを組み合わせた、一言では言い表せない【攻めのヤバサウンド】が独特。ジョン・ゾーンさんの変態殺人サックスに加え、ハナタラシやボアダムスというオルタナノイズ実験バンドで有名な日本人ボーカル山塚アイさんの超絶狂騒スキャットシャウトが、楽曲に花を添えます。
プレイだけでなく、人間のエロスや暗黒面を切り取った、ダークな楽曲コンセプトが変態的だし、毎回ドキッとする衝撃的なジャケットアートワークもとにかくヤバイ。もうこの人たち「売れる気がない」としか思えません。
■Naked Cityのアルバム一覧
1st | 2nd | 3rd | 4th | |
---|---|---|---|---|
原題 | Naked City | Torture Garden | Grand Guignol | Heretic |
邦題 | ネイキッド・シティ | 拷問天国 | グラン・ギニョール | 異教徒 |
ジャケ | 射殺死体写真 | 日活ロマンポルノの1シーン | 人体標本写真 | ボンデージ写真 |
年 | 1990年 | 1990年 | 1992年 | 1992年 |
曲 | 55分26曲 | 26分42曲! | 61分39曲 | 56分24曲 |
ポイント | わりと軽快JAZZ?でもやっぱりヤベェ!そもそもジャケがヤビャア!裏ジャケが丸尾末広。 | 1曲が短ぇ!そして速ぇ!Osaka BondageとかKaoruとかS&M Sniperとか日本っぽい曲名が。 | グラン・ギニョール(フランスの見世物興行)感すごい出てる(本物見たことないけど)!2ndの曲がようけ入ってる。なんかおトク感。 | 架空の映画のサントラというてい。そして全部即興!「7000匹の蛙が!」「生きたウンコの魂の口寄せ」という曲名も。逆にこの映画見てェ!ジャケ中に丸尾末広絵。 |
5th | 6th | last | |
---|---|---|---|
原題 | Leng Tch’e | Radio | Absinthe |
邦題 | 凌遅(レンツェ) | ラジオ | アブサン |
ジャケ | 1905年撮影の凌遅刑写真 | アメリカ人芸術家マン・レイの写真作品 | ドイツの人形作家ハンス・ベルメールの作品写真 |
年 | 1992年 | 1993年 | 1993年 |
曲 | 31分1曲! | 57分19曲 | 42分9曲 |
ポイント | 1曲が長ぇ!そして重い遅い!JAZZっていうよりドゥームメタル的!痛そうでトラウマ!唯一無二コンセプトに衝動買い! | 最初やさしみある。途中からいつもどうり。表現の幅広っ!ジャケットの作品名「woman in mask and handcuffs,1928」 | 山塚アイと殺人サックスが出てこない!暗い!アンビエントノイズ的で従来のNCっぽくないけど以外と好き!水島新司の「あぶさん」とはたぶんまったく関係がない。 |
このあと、ライブ盤やBOXセットなども発売されています。
アルバム「レンツェ」とは?
ネイキッド・シティの5thアルバム「レンツェ」は、1992年発表。私にとっての初ゾーンがこれでした。ちなみに1992年日本では、米米CLUBの「君がいるだけで」とか、槇原敬之の「もう恋なんてしない」とか、ドリカムの「決戦は金曜日」とか、ZOOの「Choo Choo TRAIN」だとかがヒットしていました。
で、このアルバムは何かの音楽雑誌っぽいもので紹介されていたと思いますが、詳しくは覚えていません。
「中国で実際に行われていた凌遅刑(りょうちけい)という処刑方法をテーマにしたアルバムである」
何ソレ?どんな音になってんの?絶対聴いてみたい!ってなって、ジャズもゾーンもよく知らない若造が音よりもコンセプトで衝動買いしちゃったら、すっごいハマって他のアルバムとかも聴き出して、そこから少しジャズに興味が出てちょこちょこ聴くようになった、っていう経緯です。(極めて特殊な例)
凌遅刑とは?
凌遅刑(りょうちけい)とは、中国や朝鮮半島で行われていた残酷な処刑方法。「凌遅」とは「ゆっくり山に登る」の意味らしく、死という頂にゆっくりと到達させるため、すなわち長く苦しみを与えながら死に至らしめるため、全身の肉を少しずつ削ぎ落していくという処刑方法です。代々その技術を受け継いだ凌遅職人がいたらしく、簡単に死なないような削ぎ場所を熟知していたり、流血を抑える特殊な油を塗りながら削いでいたとか、アヘンで延命させながら、などの情報もあります。
アルバムのジャケットに、この凌遅刑の実際の写真が使われています。……イヤ、ダメでしょ!! まぁでも1stアルバムで路上に転がる射殺死体写真を使って一部の国で検閲に引っかかっているネイキッド・シティさんなら、ダメでは…ない…のか…? ちなみに刑を受けている人の表情が苦痛というよりは、恍惚な感じになっているのはアヘンのせいかもしれません。
ちなみに凌遅刑は【ググるな危険】ワードです。ヤバイ写真が多数ヒットします。良い子はググらないように!
レンツェはどんな曲?
アルバムにはこの1曲のみで、その1曲が30分という長さで変態です。静かだが不穏なギターハウリングから曲が始まります。非常にスローなテンポでベースとドラムが重なり、重厚で荘厳な空気に包まれ、じょじょに音が盛り上がり、あるところで「ドジャーーーン!」と爆発します。「処刑人登場!」って感じでしょうか。しばらくそういう展開が続きます。ドゥームメタルのかっこいい曲が始まりそうで始まらない、重苦しいイントロが永遠に続く感じです。凌遅刑の準備が厳かになされる中の、受刑者の絶望的な不安と恐怖が見事に表現されているパートになります。
そしてついに、曲が始まって16分くらいのあたりで、凌遅刑が始まります。山塚アイの「叫び」が加わります。それはまさに受刑者の苦痛と苦悶と恐怖の叫びです。ホントに受刑者の声を録音してきたんじゃないかって程リアルです。処刑の情景が浮かびます。
残り10分くらいの所で、ゾーンが来ます。殺人的な金切りサックスが乱入し、もともと高かったボルテージがさらに上がります。このサックスは、人の叫びにも聞こえますが、私は肉を削ぐ痛み音と解釈します。初めのあたりは、なんとか耐えられる痛みなのでまだ静か、このサックスが入ってきてからは死に至る耐えがたい痛みというものが表現されてる気がします。
ホント聴くに堪えない、耳をふさぎたくなるような絶叫と狂気のサックス音が最後の方まで続き、ある盛り上がりを境にパタッと音が止み、静かなギターとシンバル音だけで、静かに静かに曲が終わっていきます。「あ、ついに死んじゃった…」と、その瞬間がはっきり分かります。
世界中のミュージシャンに、「凌遅刑ってテーマで曲作れ!」って言って競わせたら、間違いなく優勝するサウンドでしょう。処刑の情景が脳裏に浮かびすぎてヤバイです。30分という長さをまったく感じさせない構成も見事……そしてふと我に返る…
「これJAZZか!?」
これっていつ聴くの?
…って聞かれたら超困ります。
間違っても家族やカップルでのドライブ中にはかけられないし、作業用BGMとしては、作業にまったく集中できないため役立ちません。通勤通学中にコレ聴いてて音漏れしたら、捕まっちゃいそうですし、一度聴いたら、連続して聴く元気は肉と一緒に削ぎ落されちゃって、しばらく封印せざるをえません。
おススメの聴き方は、直立不動でアイマスク+ヘッドホン大音量で自分が受刑者になった気分で聴くことです。疑似死を味わうことができ、何かがリセットされた気分になります。ただコレ、心の弱い青少年が聴いたら、世を儚んでホントに死んじゃうかもしれないので要注意です。音楽だけど、R18指定にしてもいいんじゃないかと思います。
で結論、この曲は節分の日か何か、年に1回くらい厄除けとして聴くのが良いでしょう。聴くのがつらい方は、CDを本棚に入れておくだけで、魔除けの効果があります、たぶん(笑)
除魔(*´▽`*)魔除
【おまけ】怖くないジャズもご紹介
数少ないJAZZレパートリーから、お口直しに怖くないJAZZもご紹介(‘ω’)ノ
ルイ・アームストロング(剛腕 ルイ)
トランペットとええ声ヴォーカルが渋い、古き良き感じのオシャレJAZZです。「剛腕ルイ」って言いかえると覚えやすいです。人が来た時用のカモフラージュ(普通の音楽も聴いてますよ、という謎アピール)として買ったんですが、いや…いいものはイイですよね。作業中によく聞いたりします。
松井慶子
日本人ジャズピアニストとして海外で成功。旦那さんが演奏する尺八を組み合わせた「THE WIND AND THE WOLF」という曲のカッコよさは異常。川井憲次さん好きな人は好きかも。
平成最後に「凌遅」かぁ……ま…いいよね!
(๑´ڡ`๑)テヘペロ♡
「え?目隠ししてどうするの?」
「凌遅(レンツェ)に決まってるじゃん!」
※トラウマ音楽アルバム大賞、なんて賞はありません。でもあったら、この「レンツェ」が優勝。
※このサイトで紹介されているコンテンツを視聴したりしたことでトラウマになったとしても、当方は一切責任を負いかねますのでご了承ください。
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