【ちょっと過激な日本人論】「殺人率/日本人は殺人ができない!」 宮崎学・大谷昭宏
ちょっと前にこんなニュースがありました。
かいつまむと、
●総自殺数減った ъ( ゚ー^)ヤッタネ♪
●総自殺率も過去最低に ъ( ゚ー^)ヤッタネ♪
●未成年は自殺率過去最悪 (lll ゚Д ゚)ノヤヴァイ
このニュース見て、この本を思い出しましたので紹介します。
殺人率 日本人は殺人ができない! /太田出版/宮崎学(評論家)
「殺人率」どんな本?
2004年、今から約15年前に発刊された本です。
この本は、いくつかの統計データとその分析、推論をまとめたものになっており、アウトロー作家ではなく「作家アウトロー」の宮崎学さんと、ジャーナリスト大谷昭宏さんの共著、とはなっていますが、主体は宮崎さんですね。
第1章:宮崎さんから数々のデータが資料として提示される
第2~4章:そのデータ(結果)の原因などを宮崎さんと大谷さんの対談形式で考察
という流れになっています。
2~4章は、本当に対談をそのまま書き起こしたような感じなので、ちょっと脱線してしまったりと、筋道が整理されている書籍に比べると若干の読みづらさがあります。
DEATHが、全編を通して宮崎さんの関西弁かつアウトロー口調(文体)とディスり、答えのない問題に挑んでいくリアル感がちょっと新鮮です。
あと右翼とか左翼とかの話も少し多め。
「殺人率」のポイントは?
第1章で提示される以下のデータがこの本の根幹、日本の殺人率の年次推移です。
引用させていただきます。
殺人率とは、日本人が個人的に日本人を殺害する率です。「100万人(または10万人)あたり●●人」というカウントをするそうで、戦争での殺人や死刑を含みません。
こんな統計があったこと自体まず驚きですが、グラフを見てみると戦後1950年代後半からぐんぐん下がっているんDEATHね。その率は1997年時点で世界トップクラスの低さで、そしてこんなに下がり続けているのは日本だけとのこと。
「殺人がどんどん減っていって、安全で平和な国になっていっているから良い事だよね?」と思いがちですが、別の統計を見てみると自殺率は上がり続けていました。
●殺人率はぐんぐん下がっているのに、自殺率は上がっている
●若年層の殺人率&自殺率は世界と比べて異様に低い(逆に団塊の世代あたりが高い)
この理由を分析していくのが、この本の目的になります。DEATHが、大学の先生や専門の研究者ではなく、アウトローとジャーナリスト視点で分析していくところが面白いポイントになります。
面白かった点
分析・考察の着地点を書いてしまうとネタバレになってしまうので、そのあたりは避けつつ、そこに至るまでで「はえ〜、そういう考えもあるんやね」と感じたポイントをご紹介したいと思います。
命より重い見栄と面子
確かに!と思ったのですが、多くの殺人と自殺の真因が見栄とか面子である、ということ。
不当な扱いを受けたので怨恨殺人=まさに面子を潰された
遊ぶ金ほしさに強盗殺人=気前が良いと思われたい
不幸だったので無差別殺人=面子潰されすぎ&やればできる子と思われたい
事業失敗して自殺=立場が無い
異性に振られて自殺=あの娘に負けるなんて
いじめを苦に自殺=エンドレス面潰
なるほどね。
敵のいない社会
今の日本は「敵がいない」という稀有な状態・時代であること。
徴兵制もなく他国と争ってもいない。戦国時代のように国内で対立もしていない。経済発展して管理型社会が完成し、国家とか権力に虐げられている感もそんなにない。人も自然界の一員として見た場合、敵がいないという環境は確かに特殊な状態。
このことは安心して暮らせる良い状態なのDEATHが、逆に『闘争や生殖の本能エネルギー:人としてのガムシャラさみたいなものが縮小し続けている状態』ではないか、とのこと。
なるほどね。
死の欲動と攻撃性
フロイトさんが提唱する、死へ向かおうとする欲動のこと、別名デストルドー。これが外に向かうと殺人に、内に向くと自殺になるとのこと。他殺だろうが自殺だろうが「殺し」に至る欲動の強さは、その人の攻撃性の強さとも言える────。
「自殺しちゃう人の攻撃性が高い?」って思いましたが、攻めるか逃げるかという選択肢があった時に、「(性格的に)逃げたくない人」「(面子的に)逃げられない人」「逃げ方を知らない人」というのは確かに自殺しちゃうかもね、と思いました。そのことは逆に言えば「攻撃性が高い」と言えるかもしれません。
なるほどね。
成長する社会に犯罪はつきもの
これは宮崎さんの持論。
新しいものが生まれたり、既存の価値観が壊れたり、変化を伴う「成長」というもは、何らかの軋轢や対立、不満や格差も発生するもの。なので犯罪も起きるということです。
殺人等犯罪が減り続ける社会=成長していない社会
なるほどね。一理ありますね。
「殺人率」現状どうなっている?
さて、この本は2004年発刊でしたが、そこから約15年、現在はどうなっているのでしょうか?
殺人率と自殺率のその後の推移を調べてみました。
殺人率は…さらに下がり続けてた!
「GLOBAL NOTE」というめっちゃ有能なサイトに直近の殺人率データがまとまってました。書籍の引用グラフとは集計方法が多分違っているのですが、1990年から2017年の27年で下がり続けています。
なるべく比率を合わせてグラフを重ねてみました。
↓
ますます日本人は人殺しができない民族まっしぐらです。
まさしく
日本人の殺人離れ
ですね。
会員登録(有料)すると全機能が使える、有能統計サイト!総務省のやつもこれくらいにしてほしい!
自殺率は…下がってた!
自殺率については、この「殺人率」が発行された2004あたりまでは順調に伸び続けていましたが、2008年リーマンショックを境に急激に下がり続けています。自殺率と失業率は相関するらしいのですが、これはアベノミクス効果なんでしょうかね? そんなに好景気感はないんですけどね…
Wikipedia「日本の自殺」ページの「自殺者数および人口10万人中の自殺率の推移」をグラフ化
さて、現状過去最低レベルの自殺率になり喜ばしい状況ではありますが、冒頭のニュースにもあるとうり
20歳未満の自殺率は過去最悪
これは何が真因なのか?
そしてもう一点、殺人率に加えて自殺率も下がり続けているこの状態、
日本人のデストルドーはどこへ消えたのか
こういうのをみんなで議論したいですね。
友達いないけど。
え〜と「桜の会」とか「MDMA」とか「活動自粛」とかどうでも良すぎます。
(´-ω-`)ウーン
まとめ
別にエグい表現だったり、内容が書かれてるわけではないので、この本読むだけでトラウマることはあまりないでしょう。
ただ、ちょっぴり過激な主張だったり言動などがあり、昨今のSNSに投下すると燃え上がりそうな表現が含まれています。神経質な方や、正論原理主義の方は読むのを控えておいた方が良いかもしれません。
この本は、
【良好な状態】に対して手放しで受け入れるのではなく、良くない時と同じように分析してみることで、実は新たな問題の火種が生まれていないかというリスク認識を拡張するきっかけ
になる良き本だと思います。
おしまい
「アウトローは離脱しなくて寝ない」
※本当のトラウマで苦しまれている方々を軽視したり、蔑ろにするような意図は一切ありません。
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