【番外編】世界は詰むや詰まざるや?中東の難民事情をリアルに描く注目のレバノン映画「存在のない子供たち」を見て泣きそうになった話!
映画館で映画見ましたよ!
「バイオレンスボイジャー」ぶり、今年2回目です。(これでもハイペース)「存在のない子供たち」というレバノンの映画で、え~と、ひとことで言うと、
良かったですよ!
٩(ˊᗜˋ*)و
中東の難民事情を超実感できる良作
中東問題─────。
宗教、内戦、移民、難民…この漠然としたキーワードは、ニュース等でよく耳にしますが、日本からの距離が遠すぎるためイマイチ実感ができないですよね、旅行に行く人も少ないでしょうしね。
テレビで池上さんとかがわかりやすい図とかで説明はしてくれますが、知識として理解できたとしてもそれは理解した気になっているだけ。私自身も含めてですが。だってすげー複雑ですもん。もとはイギリスさんが悪いと言われてますが……。
この映画を見たら、その問題の一端を強く実感できることでしょう。
小難しい政治・宗教的な話ではありません。ある子どもたちの不遇な環境をリアルに描く、というシンプルな構成ながら、光る脚本とキャスティングのアイデアで、否応なしに引き込まれてしまい、「ああ中東問題ってこんな影響が出てるんだ」ということが実感できる良い映画です。なるべくネタバレしないよう、わかりやすくご紹介したいと思います。
上映映画館、上映スケジュールはこちらから。
基本情報
レバノン共和国の女性監督ナディーン・ラバキーさん(役者でもある)が、3年ものリサーチをもとに実話も織り交ぜながら制作した、中東の難民問題に焦点を当てた社会派ドラマ。描写がとてもリアルでしたが、ドキュメンタリー映画ではありません。
●監督・脚本:ナディーン・ラバキー
●2018年公開 PG-12
●原題:Capharnaüm(カペナウム)
●中東のスラム街が舞台
●カンヌ国際映画祭審査員賞他、数々の賞を受賞
ちなみにレバノンってこんな距離感、いや遠いですよね。そして国土面積は10,450 km²、岐阜県と同じくらいの大きさです(思っていたより小さい)。
レバノンは、ゴーン元会長のおかげで、一気に知名度爆上がりましたね!
■あらすじ
わずか12歳で、裁判を起こしたゼイン。訴えた相手は、自分の両親だ。裁判長から、「何の罪で?」と聞かれたゼインは、まっすぐ前を見つめて「僕を産んだ罪」と答えた。中東の貧民窟に生まれたゼインは、両親が出生届を出さなかったために、自分の誕生日も知らないし、法的には社会に存在すらしていない。学校へ通うこともなく、兄妹たちと路上で物を売るなど、朝から晩まで両親に劣悪な労働を強いられていた。唯一の支えだった大切な妹が11歳で強制結婚させられ、怒りと悲しみから家を飛び出したゼインを待っていたのは、さらに過酷な“現実”だった。果たしてゼインの未来は―。
引用:「存在のない子供たち」公式サイトhttp://sonzai-movie.jp/
法的な存在証明がないことで「存在のない子供たち」って邦題が付けられていますが、これって怖いことですよね。何かあって死んでしまっても、死亡届け等を提出する必要がないということですからね。書類もなければ、人権もないんです。
原題の「カペナウム(カペルナウム)」は、フランス語では新約聖書のエピソードから転じて、混沌・修羅場の意味合いで使われるとのこと。あとね、屠殺場とかの意味もあるみたい。映画では子供の苦難だけでなく、不法就労せざるを得ない大人の苦難も描かれています。当たり前ですが、原題のほうがしっくりくる気がします(フランス語知らないけど)。
■予告編
■映画「存在のない子供たち」公式サイト
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もう「不遇な子供が必死に生きる」っていうシチューエーションだけで泣けちゃうんですが、映画として良かったポイントを主に2点あげさせていただきます。
ポイント①:脚本アイデア
あらすじにもあるように、約12歳の少年ゼインくんが自分の親を訴える……「自分を生んだ罪」で。そしてどうやらゼインくんは人を刺したらしく、手錠をかけられています。もう尋常ではない状況ですが、なぜそういう状況に至ったのかをさかのぼって描く構成になっています。シグルイみたいな感じですね。
何でこうなった?
裁判の結末は?
絶対目が離せなくなる、秀逸なアイデアです。
ポイント②:キャスティングアイデア
ほとんどの登場人物について、いわゆるプロの役者ではなく、役柄と似たような体験をした素人をキャスティングしたという点です。
主人公のゼインくん役のゼイン・アル=ラフィーアくんは、実際にシリアからの難民としてレバノンに逃れ、スーパーの配達などをしていたということですし、ラヒル(家出したゼインくんと一時期一緒に暮らす)役の女性も、自分の正確な生年月日が分からず、エチオピアの難民キャンプで幼少期を過ごし、レバノンでメイドとして雇われるも逃亡、不法就労を続け、映画の撮影中に逮捕されてしまうなど、映画の役柄のまんまです。
だからドキュメンタリーと錯覚するほど演技が自然だし、言っているセリフに真実味があるし、何より訴えかける目が本物。
これは、いかに有名な役者を起用することよりも 価 値 が あ る !
その他ポイント
字幕の配置が良かった!
正確にはうろ覚えですが、最初の法廷シーンで、ゼインくんが両親を告訴すると言い、裁判官が「何の罪で?」と聞いたあとの返し。
「僕を生んだ罪で」と言う重要なシーン。
画面中心にゼインくんの顔アップ、で上記の字幕がその顔にかからないように右(左だったかな?)に寄せてあったんですよね! 背景は濃い色なので、白い文字の字幕がくっきりと読める! うっはああああ! これだけでぐうかっこいいポスターが出来上がりそうな絵面でしたよ!
で、後半の方にもそんな字幕配置があったんですよね。レバノンの制作サイドでそういう指示があったのか、日本の配給側で判断したのかわかりませんが、個人的にはGOOD JOB!と評価します。
※ただし後者だった場合、製作者側が意図しないデザイン性をあまり乗っけすぎるのは良くないと思います。が、今回くらいのはすごくさりげない処理だけど効果バツグンでありよしのありですね。
思ったこと
「生まれてこなければ良かった」と、子供が自分の生を後悔する事程悲しいことはありません。地獄を見てきたゼインくんは悲痛に訴えます。
全ての大人に聞いて欲しい、育てられないなら生むな
ああああぁぁ……
それなすぎ
日本でも児童虐待死のニュースがちょくちょく流れますが……あれは非道い。●●●●な私でも胸が痛みます。日本の虐待と、中東の貧困ではちょっと要因が違うとは思いますが、とにかく【子供が自分の生を後悔しない社会】、これを優先順位の1番にしませんか? 偉い人。
でね、日本は少子化でヤバいヤバい言ってますが、その他の世界では逆で人口が増えすぎてヤバいヤバい言ってます。人口爆発によって雇用・住居・食料・水が不足し、結果「貧困」という問題が深刻化します。貧困が深刻化すると、治安の悪化~内戦や戦争への発展、そんな荒廃した世界の負のしわ寄せが、必ず弱い者=子供に降りかかってしまうのです。
これね、誤解を恐れずに言うならば、
そういう「詰み環境」に子供を晒さないよう、日本人は賢くて空気読めて優しいから、子供を無節操につくらなくなったのではないでしょうかね。
(少子化の原因=日本人の賢さ)姥捨てや口減らしなど、人口爆発で生じる不幸体験がDNAにも刻まれていますしね。
または
今の日本は「生きづらい」と感じる人が多いからではないでしょうか。今すでに「子供を放ちたくない程の生きづらく不安な社会=詰み社会だな」と大人自身が認識しているならば、そりゃあ子供もつくらないし、なんなら結婚もしないですよね。(自分一人が生きていくので精いっぱいなので)
学校に行きたいのに行かせてもらえないゼインくんのような環境と、ささいなミスが死に匹敵する程の高ストレス(いじめリスク)にさらされながらも学校へ行ける環境の、どっちが不幸だ? 比べるのはそもそも間違いだ(by眩暈SIREN)が………まぁ前者ですよね。
おわりに
久々に感動したので、勢いよく書き上げましたが、冷静に振り返るとトラウマ映画ではないかもしれません。生きる環境は過酷ですが、直接的な残酷描写はありません(児童婚とか人身売買など残酷な展開を想起はさせますが)。PG-12指定の理由も未成年者の喫煙シーンです。最後の最後にちょっと救われるシーンもあり、胸糞映画でもありません。心にガシガシ刺さるという点ではウマコンですが、普通の人にもおすすめできるという点で番外編としましょう。
m(_ _)m
とても重く、苦しく、胸が締め付けられっぱなしの2時間なので、バストが縮んじゃうかもしれません。女性は要注意です。(セクハラ発言)
それでもやっぱり観て良かった。
世界はまだ詰んでないと思えたから。
なぜなら
子供の笑顔が間違いなくそこに存在していたから
( ・`ω・´)キリッ
※ちなみにエンドロールで「ワリードとメイルーンに捧げる」とありましたが、これは監督の子供さんのお名前だそうです。
「良い子は早く離脱して寝なさい」
※本当のトラウマで苦しまれている方々を軽視したり、蔑ろにするような意図は一切ありません。
※泣きそうになりましたが、泣いてません! (≧へ≦)
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